二万感謝企画
□44.
1ページ/1ページ
茹だる様な暑さに、寝苦しさを感じて目を醒ました。は、は、と荒れた息を整えて、見た夢を払い落とす様に首を振った。
「悪い夢でも見ましたか?」
「むく、ろ」
何故ここにいるのだ、と視線を向ければ、骸はずっと居たじゃありませんか、と白いタオルで僕の汗を拭い、笑った。そんなはずはない、と否定しかけて、ああ、あれは夢だったのだろうか、と思った。
「大丈夫ですよ、僕がいますから」
鼓膜を悲しいくらいに優しく震わせる穏やかな声、頭を撫でる大事にされていると自惚れてしまう様な優しい手つき。普段なら払い落とすのに。今日はそれが出来ずに微睡むことしか出来ず、ただ身体を寄せた。
「むくろ、むくろ、むくろ」
こんなに何度も何度も彼の名前を呼んだのは、初めての様な気がする。こんなにも恋しい、と、傍に居て、と願ったのも初めてだ。随分と女々しくなったものだ。そんなにも怖ろしい夢だったろうか。怖かった、苦しいと、初めて感じた。
「雲雀君、大丈夫。次は雲雀君の望む、幸せな夢が見れますから。」
骸の唇が額に触れた所で、僕は意識を手放した。
理不尽に怒る僕に笑みを向けて、馬鹿をやって、僕に殴られて、それでも笑って、雲雀君、雲雀君、と追い掛けてくる骸。何が幸せな夢、だ。日常じゃないか。馬鹿だね、君は。僕がこんなことで幸せになれるわけ、ないだろう。
茹だる様な暑さに、寝苦しさを感じて目を醒ました。数分、その後、骸を捜して視線をさ迷わせた。そうして気付く。
本当に、幸せな夢だったのだ、と。
僕が求めた、夢だった。では、あの僕に夢を見せた骸は、夢だったのだろうか?そうだとしたら、随分と一。
違う、夢じゃ、ない。この無造作に置かれたタオルは、骸の物だ。僕はこんなタオルを持っていないのだから。たった5分そこそこだった。それなのに、どうして眠ってしまったのだろうか、と何時間か前の自分を恨む。どうして、と君を恨んでしまう。
【5分】
(どうして、僕に捕まってくれなかったの)