二万感謝企画

□44.
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茹だる様な暑さに、寝苦しさを感じて目を醒ました。は、は、と荒れた息を整えて、見た夢を払い落とす様に首を振った。

「悪い夢でも見ましたか?」
「むく、ろ」

何故ここにいるのだ、と視線を向ければ、骸はずっと居たじゃありませんか、と白いタオルで僕の汗を拭い、笑った。そんなはずはない、と否定しかけて、ああ、あれは夢だったのだろうか、と思った。

「大丈夫ですよ、僕がいますから」

鼓膜を悲しいくらいに優しく震わせる穏やかな声、頭を撫でる大事にされていると自惚れてしまう様な優しい手つき。普段なら払い落とすのに。今日はそれが出来ずに微睡むことしか出来ず、ただ身体を寄せた。

「むくろ、むくろ、むくろ」

こんなに何度も何度も彼の名前を呼んだのは、初めての様な気がする。こんなにも恋しい、と、傍に居て、と願ったのも初めてだ。随分と女々しくなったものだ。そんなにも怖ろしい夢だったろうか。怖かった、苦しいと、初めて感じた。

「雲雀君、大丈夫。次は雲雀君の望む、幸せな夢が見れますから。」

骸の唇が額に触れた所で、僕は意識を手放した。


理不尽に怒る僕に笑みを向けて、馬鹿をやって、僕に殴られて、それでも笑って、雲雀君、雲雀君、と追い掛けてくる骸。何が幸せな夢、だ。日常じゃないか。馬鹿だね、君は。僕がこんなことで幸せになれるわけ、ないだろう。


茹だる様な暑さに、寝苦しさを感じて目を醒ました。数分、その後、骸を捜して視線をさ迷わせた。そうして気付く。

本当に、幸せな夢だったのだ、と。

僕が求めた、夢だった。では、あの僕に夢を見せた骸は、夢だったのだろうか?そうだとしたら、随分と一。

違う、夢じゃ、ない。この無造作に置かれたタオルは、骸の物だ。僕はこんなタオルを持っていないのだから。たった5分そこそこだった。それなのに、どうして眠ってしまったのだろうか、と何時間か前の自分を恨む。どうして、と君を恨んでしまう。


【5分】


(どうして、僕に捕まってくれなかったの)



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