二万感謝企画

□45.
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何がどうなってこうなったのかがわからない。ぼやけて視界が定まらない。足に力が入らなくて、俺は膝をついた。部屋に溢れる血の匂いに、俺は胃液を押し出された。

「大丈夫ですか?綱吉君」

心配そうに手を差し出す骸を見つめ返せば、疲れが溜まっているんでしょうか、と額に冷えた手を押し当てた。熱は無いですね、と安心した様に微笑む骸に背筋はぞわりと逆毛だった。

俺を抱き上げて、皮肉を交えた優しい言葉を掛ける骸は何一つ変わらないいつものそれで、あの部屋で見た物は全て幻では無いのだろうか、と思えてきた。しかし、それを否定する様に、骸の頬、手、服に飛び散った赤が俺を責めた。

(骸を壊したのは、俺だ。)

みんな、ごめんなさい。みんなの返り血を浴びた男を、俺は殺せません。だって、骸を壊したのは俺で、骸に、愛だなんて下らないと笑った骸に愛してると囁いて、囁かれたのは俺だから。

「骸、俺もう寝るからさ」
「顔色もよくないし、僕もそれを勧めます」
「うん、ありがとう。」
「おやすみなさい」

ちう、と額でリップ音。毎晩毎晩、おまえがいい夢を見れるまじないだとかなんだとかって寄越したキス。それも今日で最後だ。俺はもう目覚める予定が無いから。

なあ、骸。来世が俺にも在るのなら、その時はさ。誰もいない無人島で二人っきりだったらいいな。そしたらおまえ、ずっと綺麗なままなんだ。俺、おまえの眼が、指が、全てが好きだったよ。

愛、はもう口にしない。


【最後のキス】


(綱吉君の世界に僕以外は不要だと願った罰ですか)



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