□prologue
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『…えっ…』

世界が逆転した。…いや、あたしが逆さまに落ちている、と言った方が正しいのか。足元にある群青色の空はあたしから遠ざかっていて、頭上には総てを洗い流してくれるかのような壮大な海があたしを迎えていた。

『っ…!』

今までテレビや写真の中でしか観ることはないだろうと思っていた憧憬とご対面してしまったあたしは、酸素を求める魚だと笑い飛ばされても否定できないような表情をしていたに違いない。

『っ…(なんで、なんでなんでっ)!!』

今になって思い返すと、この時のあたしは言葉を発することをしなかったのではない。できなかったのだ。もちろんそんな壮大な景色を初めて観たということあるし、空から落ちているといういきなりの非現実的な状況に頭が追いついていなかったこともあっただろが、しかしそれ以前に、あたしという個体がまだこの“世界“に馴染んでいなかったのだから。

ドプンッ

赤子のようなあたしは海へ吸い込まれるかのように落ちていった。
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