遠い空から見守って


□03 真面目にな
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太陽が顔を出して5日目の朝。

「夢近ー!起きろー!」

「あんだよ兄貴、まだはえぇじゃないか!」

春美と夢近の攻防はお昼までかかった。

「全く、ガキじゃあるまいに」

「そーゆー兄貴は俺が離せと言っても離さなかったくせに」

お互いぶつくさ文句を言いながらも、食事を済ませた。

そして、春美の車で楽しいドライブ、とまでは行かなかった。

「なぁ兄貴」

「何だよ」

「何でもねー」

夢近がふいっとそっぽを向くと、車はガタガタと道を走っていた。

「だったら聞くな!今運転中なんだぞっと」

「あっそ」

車は30分かけて病院へ付いた。

「あーしんど」

春美が肩をぐるぐる回して車を降りた。

「やあ夢近」

「あ!咲久間だ!」

「よっす」

後ろの春美に目配せして、咲久間が笑った。

「ふーん、それで?」

「それでってお前なぁ!」

「はいはい、病院内は静かにね」

「つるめきババア」

誰がババアよ!と1番大声を上げたのは他でもない陽子だった。

「ちょっと夢近」

「なあにー?」

「なあに、じゃないわよ!あんた自分の事分かってるの?」

陽子が小声で夢近の耳元で喋った。

「ま、どうせなるようになるんじゃね?」

「んもう、楽天的なんだから」

「おーい夢近ぁ!」

ド迫力に名前を呼ばれて、顔を赤くしながら夢近が春美の所へ走って行った。

「クソ兄貴」

「あ?何か言ったか?」

「別に」

ガタガタと車はまた砂利道を通って家に帰って来た。

「腹減ったぁ!」

「待てよ、今帰ってきたばっかだろ!少しは休憩させろ!」

何だかんだ言いながら、夜がやって来た。

「離せよっ!」

「やだ」

「早く離しやがれ!」

「やだねったらやだねー」

歌いながらケロリとしている春美。

「ゲス兄貴」

「あ?何か言ったか?」

「別に」

かくして長い夜は続いて行くのだった。

「真面目にやれよ」

「真面目にな」

「ん」

そして夜が明けた。

「おっはー!」

「今時そんなギャグ受けないぞ」

「春美ぃぃぃ」

寿彦が泣きマネするも、軽くスルーされていた。

「腹減った」

「待ってろ、夢近」

いつもの場所、いつもの光景、いつものメンツ。

「俺、後どのくらい一緒にいられるかな?」

1人自問自答してみる。

「やっぱ、どーでもいーや!」

「何がどーでも良いんだ?」

春美が部屋に入って来て夢近に言った。

「べったれ兄貴の早く寄越せ!」

「うお!?何て強引な!」

「白々しいヤツめ」

夜は駆け足で過ぎて行くのだった。

「夢近」

「あんだよ」

「ん」

「ワケ分かんねーし!!」

「んーん、良い感じ」

「………馬鹿野郎」

耳まで赤くなって夢近と春美の夜は続いて行った。





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