遠い空から見守って


□06 倒れやすい
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それは、4人でのドライブの帰り道。

「春美ぃぃぃー」

「分かってる!道は合ってるはずだ!」

しかし、見えるのは山道と木だけ。

「うお!!」

急ブレーキをかけた春美に全員が喚いた。

「何だよもー!!」

「しっかり前見えてんのか?」

「いたたたた」

「ここを抜ければ!」

国道に出る!!と春美が力強く言ったが。

「あれ?」

期待に反して道は一向に変わらなかった。

「春美ぃぃぃー!」

そんな慌ただしさの中、1人夢近は眠りに就いていた。

「エーンエーンエーン………」

泣き声が微かに聞こえてくる。

「あぁ、俺かぁ」

幼い頃の夢近は泣き虫でいつも泣いてばかりいた。

「こらーお前らー!」

「逃げろ!!」

そして、兄の春美におんぶされては家に帰っていた。

「兄貴は昔っから変わらないなぁ………」

「夢近、俺がいつでも守ってやるからな」

夢近は体が弱く、咳をしては春美を心配させていた。

「兄貴は昔っからガキだったなぁ………」

「夢近には無理させられない」

ユラユラ車が揺れてもクゥーっと夢近は寝ていた。

「こんな状況で良く寝れるよな、夢近」

車はガタガタ砂利道を行く。

「アガアガアガアガ!!」

「春美ぃぃぃぃー」

「大丈夫だ!夢近は俺が守る!」

「俺達はぁぁぁ!?」

寿彦と咲久間が文句を言うも車はどんどん林の中へ入って行く。

と。

「皆、掴まれ!!」

「何何何!?」

「おりゃあああああ!!」

急カーブを車が爆進していく。

「きょーっ!?」

ガガガとガードレールを擦り付けながら車は尚も走っていた。

「春美ぃー!」

「だーってろ!舌噛むぞ!」

そして、何とか車は一般道へ出て来た。

「ふぁー」

「あ、夢近起きた!」

「兄貴、ご飯まだぁ?」

「駄目だ寝惚けてるぞ、夢近」

むにゃむにゃと目を擦って伸びをする。

「もう少しだ、夢近」

そう、春美が言うとえ?って顔で寿彦が咲久間と見合った。

「なーんーでー!?」

車は柵を乗り越え、あっという間に反対側の車線へ。

「ごは、でぇ、でぇ、でぇー」

ガックンガックンしながら車が走り出す。

「エヘへー」

「夢近笑ってやがる」

「ここまで来るともう少しかも」

そして、帰宅。

「着いたー!!」

「良かったよぉー!!」

寿彦と咲久間と別れて春美の車が家路へと入っていった。

「夢近、飯にしよう」

そう、話しかければコクンと頷く夢近。

「兄貴ぃー!!」

「バカ、飯の意味が違うだろ」

そう言いながら倒れやすい夢近を支えて春美が家の中に入った。

「飯ぃー!」

「分かった分かった、騒ぐな」

夢近がその後満足するまで春美を喰らったのは言うまでもない。





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