姫と海賊
□2話
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「おい女、名前は?」
『人に名前を聞くには自分から名乗るのが礼儀じゃないかしら』
姫の頬を容赦なく引っ叩く
さっき殴られたのもあり口の中は血の味がする。
「立場をわきまえてねェみたいだな。もうお前は王女じゃないんだよ。俺たちの奴隷だ」
周りを囲まれ下賤な歓声や笑い声が飛び交う。
それでも姫はキッドを睨みつけるのをやめなかった。
「俺はユースタス・"キャプテン"キッドだ。さァ、名乗ったぞ」
『…姫です』
「ここでは俺が主人だ。お前は俺の言うことだけを聞け」
『私は船に乗るとは言ったけど言う事を聞くとは言ってないわ。奴隷でもいいけど思い通りになると思わないで』
再びキッドの拳が姫に飛ぶ
手加減しているとはいえ気を失うのは時間の問題だった。
「キッドもうやめておけ。死ぬぞ」
「この女に誰が主かわからせるまで止める気はねェ」
鼻からも口からも血が流れ
それでも姫は霞む意識の中でキッドを睨み続けた。
「チッ、地下牢に入れておけ」
意識を失った姫をキラーが地下牢へ運んだ。
※※※
気がつくと床は冷たく手足には鎖が繋がっていた。
体も顔も痛くて夢じゃなかったと思い知らされる。
「気が付いたか。キッドが無茶をしてすまない。俺はキラーだ」
姫は口をきこうとしなかったがキラーは気にすることなくパンと水を置いた。
「お前の国は貴重な薬草が取れるらしいな。俺たちの前に国を襲った連中もそれが目的だったらしい」
『薬草がどうして私になったの?』
「キッドは気が変わりやすいからな。
お前を見て気に入ったんだろう」
他人事のようだった
パンに口を付けることもなくただ呆然と床を見つめていた。
「ふんっ、地下牢がお似合いだな」
キッドが近づき中へ入ってくる
また殴られるのかと覚悟した。
「来い。お前に仕事をやる」
乱暴に床に投げられ目の前には掃除道具が
「今から一人で全て掃除しろ。汚ければ舐めてでも綺麗にさせてやる」
口を聞くのはイヤだったので黙ってタワシを手に取り床を磨き始めた。