姫と海賊

□3話
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「おい見ろよ、王女様が床掃除してるぞ」

「ホントの奴隷だな」


蔑む声が聞こえる
姫の国ではメイドも雇っていたが一緒に掃除をすることもあった。
みんなが止めたが国王や王妃はそれも社会勉強だと進んで学ばせた。

そんな姫にとってはなんの苦でもない。
憎い男の船ということを除けば



夢中で磨いているうちに夜になり男たちはワイワイと騒ぎ始める。
酒を飲んだりご飯を食べたり、姫はそれを気にすることなく床を磨き続けた。


「驚いたな。ほら、飯を持ってきた」


キラーは温かいご飯を持ってきてくれた。
姫が無視して掃除を続けようとするとバケツを取り上げられた。


「今日はもういい。飯を食って休め」

「勝手なことすんじゃねェよキラー」


キッドにバケツを蹴られ汚れた水が床に流れる


「ほらちゃんと磨け。それとも舐めて綺麗にするか?」

「キッドやりすぎだ」

「お前は黙ってろ。コイツが従順になるまで躾けてやるんだよ」


キラーはため息をつくとご飯を置いてどこかへ行ってしまった。


「キラーが助けてくれると思ったか?残念だったなァ」


ニヤリと笑うが姫は無視を続け、その様子が気に食わなくてまた殴られる。
せっかく綺麗にしたのに自分の血で汚してしまった。


「可愛げのねェ女だ」


吐き捨てるように言い残し奥へ消えた。
しばらく寒空の下で動けずにいると体に布がかけられた。



「夜は冷える。また殴られたのか」


何も答えない姫に何度ため息をついただろうか。


「その体では動けないだろ。地下牢まで連れて行こう」


キラーが抱きかかえようとすると姫はその手を払い気力だけで立ち上がった。
フラフラになりながら自分の足で地下牢に向かった。


「食事を温め直してもらった。毒は入っていない。少しでいいから食べろ」


いっそ毒が入っていればいいのに


「もう少しマシな部屋にできないかキッドに掛け合ってみよう。いつまでもこんなところはイヤだろ」


何故この人は親切にするのか
理由はわからないが信用するわけにはいかなかった。


「そのドレスもここでは似合わない。次の島に着いたら新しい服を用意しよう」

『結構よ』


急に連れて来られたのでこのドレスだけが城を思い出せる物だった。どうせ殺されるならこれを着たまま死にたい。

薄汚れた地下牢には似合わない淡いピンクのドレス。お風呂にも入れてもらえず血と埃でボロボロになっていた。
それでも海賊に与えられた物よりずっとマシに感じた。
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