姫と海賊

□5話
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翌朝キラーは約束通りドレスを届けてくれた。着替えるとボロボロだが少しいい匂いがした。


『ありがとう。ずっとお風呂に入れなかったらどうしようかと思ってた』

「もうすぐ島に着く。必要な物があれば揃えておこう」

『この船に女の人はいないの?』


さすがにキラーに下着を頼むのは申し訳なかった。


『私も降りちゃダメかしら?』

「キッドにあそこまで逆らっていたら許してもらえないだろうな。少しは言う事を聞いてみたらどうだ」

『そうなったら奴隷になったことを認めることになるでしょ。私はあの人を主とは認めない』


気の強さに呆れながらも姫が会話をするようになったのは少し嬉しかった。
懐かない猫が少し寄ってきた気分だ


「ちゃんと飯は食っているのか?」

『キラーが届けてくれたものは食べてるわ』


つまりキラーじゃないときは食べていないと


「次からは必ず俺が届けよう。あと今さらかもしれないが体は大丈夫か?」

『顔も体も見ての通りボロボロよ。今まで叩かれたこともないけど人間の体ってけっこう丈夫なのね』


殴られても血を吐いて気を失っても死ねない


「昨日も言ったがお前は美しい。あまり逆らって殴られるのは見たくない」

『キラーって意外と紳士なのね。この船は最悪なことしかないけどあなたがいてくれてよかった』


その笑顔にキラーは心臓が早くなるのを感じた。今からこの笑顔がまた歪むことになるとは。


「おい、奴隷と何を楽しそうにしてるんだ」

「キッド早起きだな」

「おい奴隷女、お前が口をきいていいのは俺だけだ」


声からして不機嫌なのがわかる
そしてわかっていながらも姫は無視を続ける。
あくまでキラー以外と口をきく気はないという抵抗だった。


「お前……来いッ!!」


何かに気付いたように突然姫の髪を掴み引きずりながら自分の部屋へ向かう。

暴れて髪が抜けることもお構いなしに部屋に着くとベッドに投げ捨てられた。


「おいキッド何を!」

「キラー出て行け。しばらく俺の部屋には誰も近寄らせるな」


恐ろしいほどの低い声
キラーは申し訳なさそうに姫を見たあと扉を閉めようとすると再びキッドが声をかける。


「キラーお前は部屋の前にいろ。絶対にそこを動くなよ」

「…わかった」


ガチャと扉の閉まる音が聞こえた。
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