姫と海賊
□10話
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表に部下がいることを確認していたので店員の隙を見て裏口から逃げ出した。
久しぶりに走りすぐに息が切れる
それでもキッドから離れるためなら無理してでも走った。
人混みを抜け少し静かになると海が見えた。
心静かに海を見ていると後ろに気配を感じる
『やっぱりバレてたのね』
「なぜ逃げたんだ。キッドに知られたらまた…」
ひどいことをされるぞ、と口に出しては言えなかった。
『私ね、キスも体の関係も恋人同士がするものだと思っていたの。だから私もいつか旦那様になる人に愛されながら抱かれると思ってた』
姫は振り向くことなく続ける
『家族と離れるだけでもツラかったのに…体まで奪われるなんて…もう生きていられないの…』
キラーの手が肩に触れる寸前で止まる
『私は汚れた…もう誰のもとへも行けない…。誰からも愛してもらえない…』
「そんなことはない!少なくともキッドはお前を気に入っているんだ」
『奴隷としてでしょ!?生意気な女の処女を奪って満足したはずよ、もう放っておいて…』
キッドが近くにいるのは気配でわかる
俺がどうするのか見ているはずだ。
「確かにキッドはやり過ぎた。だが良いところもあるとわかってほしい」
『あなたと他の仲間を見ていたらわかるわ』
振り向いた姫は泣きながらも優しい笑顔を浮かべていた。
『みんながキャプテンって従うのは支配じゃない。彼を好きでついていってるのがわかる』
「それじゃ…『それでも』
『それでも私には悪魔に見えるわ…さよならキラー。あなたとは違うところで出会いたかった…』
姫は躊躇なく崖から飛び降りた。キラーが急いで手を伸ばしたが届かない。
「キラー!!」
「わかってる!」
キラーは迷わず海へ飛び込んだ。
海に嫌われているキッドは怒りをぶつけながらも崖下に急いだ。