姫と海賊

□11話
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苦しい
苦しいはずなのに
このまま放っておいてほしい


体が沈み視界も暗くなってきたのに何故かキラーの姿が見えた気がした。



「っはぁ!…姫、姫!」


大量に水を飲んだのか呼吸をしておらず心臓も止まっていた。
キッドはすぐに軌道確保し人工呼吸と心臓マッサージをした。


「クソッ、起きやがれ!」


その願いが通じたのか水を吐き目を覚ました。


『な…んで…』


姫の頬に涙が伝う


『なんで…殺してくれないの…』


そこで意識は途絶えた。





次に目が覚めた時はベッドの上だった。
横を向くとかたいものが当たる。
ハッキリしない頭で触っていると上から声が聞こえた。


「目覚めていきなり男の体を触るとは欲求不満か?」


その声にすぐ意識はハッキリした
起きあがろうとしたがキッドがそれを許さず抱き締められる形で動けなくなった。


「いいから寝てろ。まだ夜中だ」


しばらく抵抗してみるがびくともしないので諦めた。
無理矢理抱かれているときには嫌悪感しかなかったのに、何故か今はこの体温が心地いい。

疲労の蓄積もあり姫のまぶたはすぐに重たくなった。


※※※



翌朝目を覚ますとキッドの姿はなく自分がはじめて見る服を着ていることに気付く。
昨日キッドが買ってくれた物で素材がいい足首までの長さのあるワンピースだった。


『また戻ってきたんだ…』


ちょうどキラーが部屋に来ると心配そうに顔を覗き込んだ。


「体は大丈夫か?頼むからもう無茶なことはしないでくれ」

『さよならって言ったのに戻って来ちゃったね』

「無事でよかった。キッドも心配してたんだぞ」


うっすらとした記憶の中で二人が自分の名を呼ぶ声は聞こえていた。
それでも姫はキッドを許したわけではない。


『この船に奴隷は私しかいないの?』

「今はそうだな。前にいたのは二日ほどで処分した」

『女の人もいないのよね?』

「そうだがそれがどうした」

『私はキッドの性処理のために生かされてるってことなのね。少し納得したわ』

「違う、キッドは…」


姫は立ち上がると伸びをして仕事を求めた。


『とりあえず奴隷として過ごしながら逃げるか死ぬかの道を探すわ。ずっと部屋に閉じ込められたら餓死することにする』


その目が冗談じゃないことくらいキラーにはわかる。

それほどまでに彼女の心を壊してしまったのか。あのとき自分が抱きしめていたら変わっていたのか…いや彼女がキッドに殺されて終わりだろう。


『何かお仕事はある?』

「キッドに聞いてみよう」


彼女の笑顔はとても冷たかった。
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