姫と海賊
□13話
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それはある日突然起こった
いつものようにキッドを怒らせた姫は地下牢に放り込まれ、キラーが朝ごはんを運んだ。
「姫どうした…すごい熱じゃないか!」
目の焦点が合わず大量の汗をかきながらも体はとても熱い。
しかしここは海の上
次の島まではまだまだ日数がかかる。
キラーの様子を見たキッドは舌打ちをしながらも姫を自分のベッドに寝かせた。
「早く船医を呼べ!」
「恐らく傷口から菌が入ったんだと思います。ただ次の島までは薬がないんでこのまま治るのを待つしか…」
「ふざけるな!それで姫が死んじまったらどうすんだよ!?」
「キッド落ち着け。姫が起きてしまう」
船医の胸ぐらを掴むキッドを宥めると、栄養のあるものを食べさせてこまめに汗を拭くようにと言われた。
「コックに消化にいいものを作るよう伝えてくる」
キラーが出ていくとキッドは一人うなされる姫を見つめていた。
体が熱い
息も出来なくて苦しい
父様と母様に会いたい…
ぼんやりとした意識の中で誰かが汗を拭いてくれるのを感じる。
こんなことをしてくれるのはキラーしかいない。
『キラー……ありがとう…』
精一杯の笑顔でお礼をいいまた意識は遠のいていく。
「クソッ、誰がキラーだッ!」
怒りで拳を握り締めながら心のどこかでショックを受けた。こんなときでも姫はキラーのことを考えている。どんなに自分に向かせようとしても言うことを聞かない。
その笑顔は自分に向けられたものじゃない
「まだ姫は寝ているのか。起きたら呼んでくれ、食事を持ってくる」
「代われ。病人の相手なんてしてられるか」
キッドは酒瓶を手に部屋を出た。