姫と海賊

□14話
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『んっ…』

「目が覚めたか。熱を出したんだ、食事を持ってこよう」


温かい野菜スープとお粥が用意された。

手を借りながら座りスプーンを持とうとするが力が入らない。


「熱いから気をつけろ」


キラーがスプーンを口まで運んでくれた。
普段は照れ臭くてできないがこの日はすんなり受け入れられた。


『キラーにいっぱい迷惑かけてごめんね。さっきも汗拭いてくれたでしょ』

「さっきまで部屋にいたのはキッドだ。俺は厨房にいて何もしていない」


その言葉に姫の頭は軽くパニックになった。
あんなに優しく汗を拭いてくれたのがキッド…?
そんなはずはない、幻覚だったのか


「アイツはとても心配していた。すぐに船医を呼んだのもキッドだ」

『こうなったのもキッドのおかげなんだけどね』

「違いない」


憎いはずなのに自然と笑みが溢れた


『ありがとう。キッドにもあとでお礼言わなきゃ』

「口には出さないが喜ぶと思う。次の島のことで少し話し合うからそれまで寝ているといい」


キラーに髪を撫でられ温かい気持ちになりその手を掴んで頬につけた。


『キラーの手冷たくて気持ちいい』

「お前は熱すぎる。何かあったらすぐに呼ぶんだぞ」


もう一度頭を撫でると扉の閉まる音がした。


※※※


「キッド次の島のことだが…」


すでに5本ほどの酒瓶が転がりそれでも酔えないのか不機嫌そうな声が返ってくる。


「アイツ俺とお前を間違いやがった」

「熱で意識が朦朧としていただけだ。姫もお前に礼をいいたいと言ってたぞ」

「ふんっ、どうだか。抱いてるときもお前のことを考えてやがるしな」


間違えたことに相当腹を立てているのか、今のキッドに話し合いは通用しない。


「いっそお前がアイツを抱くか?」

「くだらないことを言うな。姫はお前のモノだろ」

「だがちっとも言うことをきかねェ!どうすれば思い通りになるんだッ!」

「たまには優しくしてやればいいだろ」

「アァ!?なんで俺がアイツの機嫌取りすんだよ」

「お前たちはよく似ているな」


はぁ、とキラーはため息をつく



「とにかく今は次の島の話だ。海軍がいるという情報も入ってる」

「だから何なんだ。喧嘩売る奴は全員殺せばいいだろ」

「姫もいるんだ、揉め事を起こすな」


興味なさそうに返事をするとまた酒に口をつけた。
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