姫と海賊
□16話
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無事に熱が下がり元気になった姫だが心は穏やかではなかった。
『はしたない…私はなんてことを』
熱があったとはいえ自分からキッドを求めてしまった事実が頭から離れない。
今日起きて部屋にいなかったのは救いだった。
『どんな顔をして会えばいいの…』
「何を一人でブツブツ言ってるんだ?」
『きゃあ!』
ノックの音が聞こえないほど考えていたらしくキラーは苦笑いをした。
「熱が下がってよかった。食欲はあるか?」
『ありがとう。大丈夫なんだけど…』
「キッドと何かあったのか?」
口に入れたスープを吹き出すところだった。
「予定と違うが小さな島を見つけたから上陸することにしたんだが、キッドもどことなく上の空な感じがしてな」
『べ、別に何もない…何もないというか…』
隠し事が下手なところまで似ている
複雑な反面二人が仲良くなったなら嬉しいのも事実。
「今のキッドなら上陸許可をくれるはずだ。怒らせるなよ」
怒らせるもなにも今は会いたくなかった。
出来ることならキラーと二人で島を回れるように祈る。
※※※
「明日の昼には船を出す。乗り遅れんじゃねェぞ!」
島についた部下たちは口々に飯だ女だと騒ぎながら散り散りになった。
「逃げようなんて思うなよ。すぐ見つけて牢屋にぶち込むからな」
『もう逃げないわよ…』
それ以上先の言葉が見つからず変な空気になった。キラーが察して酒場に行こうと提案してくれた。
『お酒って美味しいの?』
「アァ?飲んだことねェのかよ」
『ないから聞いてるの』
「チッ、可愛げがねェ」
そう言いながら自分の酒瓶を姫の前に置いた。
『これは飲んでいいってこと?』
「飲めるもんなら飲んでみろってことだ」
ニヤリとするキッドに負けじと姫は口をつけ喉に流し込んだ。
「バカ、一気に飲むな!」
キラーが止めた時には遅く
倒れるかと思ったが姫はテーブルに肘をつきキッドを睨みつけた。
『私とどっちが強いか勝負よ』
「望むところだ」
すでに姫の目は据わっているので酔っていることにキッドも気付きながら楽しんでいる。
「俺は知らんからな」
何度目かわからないため息をつき二人が酔いつぶれるのを眺めていた。