遥かの本棚4
□月ヲ喰ラウ
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「将臣くん、見て…あれ」
秋に近づく残暑の辛い季節…
見上げた空に浮かぶ月がゆっくりと赤く染まり始めた
「月食か、珍しいな…」
「月食?これが…?」
満月を見上げながら望美は驚いていた
「皆既月食は初めて見るな…部分月食なら何年かに一度あるけど」
太陽と月の間に地球が入って起こる月食
確か日本で見られるのは何十年かに一度らしいな…
昔テレビで聞いた覚えが…
「真っ暗になるんじゃないんだ…」
「地球の影で隠されるだけだしな。昔の人間は不吉だって言ったらしいが」
「なんで?」
素朴な疑問なんだろうが
それは、後ろの連中に聞いてくれ
「知らねえよ、まあ…あれだろ?赤い月に魂取られるとか?そんなんじゃねえ?」
「綺麗なのにね」
「月が隠れたらもっと星が凄いな」
「ね〜。
…地球が月ヲ食べるのかな〜」
突拍子もないのはなれた
「なんで食うんだよ。地球が月を」
「好き…だから?」
「馬鹿じゃねえ?お前、食われたい?俺以外に」