空の軌跡AS
□空の軌跡AS 第1章
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昨夜、エルモ村の温泉宿に泊まったクローゼ達は翌朝ラッセル宅に帰ってきていた。
「はぁぁ、やっと着いたわ。」
「ふふ、さすがに少し疲れましたね。」
「おじいちゃーん。ただいまー。」
ティータが家のドアを開け、元気な声でただいまの挨拶をする。しかし当然ラッセルからの返事はない。
「おじいちゃーん?」
声をあげながら、居間、台所、研究室と探していくがラッセルの姿はどこにもなかった。
「あれ?おじいちゃんどこに行ったんだろ?」
「うーん、どこかに出かけたんじゃない?」
「そうですね。おおかた中央工房といったところでしょうか。」
「あっ、きっとそーですね。」
どうせ中央工房にでも行ってるんだろう、そう考えて三人はあえてラッセルを探しに行くことはしなかった。
しかし、それから昼になり、お昼ご飯の仕度を終えた頃になってもラッセルは一向に帰ってこない。
「おじいちゃん、遅いなぁ…。」
この頃になってティータに少しの不安が生まれてだしていた。どうにも落ち着きがなく、先ほどから家の中を行ったり来たりしている。
今朝は疲れていて頭が働かなかったが、よくよく考えれば、少しおかしな点がある。
ラッセルはいままでティータがいない時に外出する場合は必ず書き置きを残してくれていた。
それというのも、寂しがりなティータを不安にさせないためだ。
しかし、今日はそれがない。
たまたま忘れただけかもしれないが、この事実がティータの不安を少しずつ増幅させていった。
今日も中央工房に行っているに違いない。うん、きっとそうだ。
でも、もし事件に巻き込まれてたらどうしよう…。
ううん、そんなことあるわけない!
でも、万が一そうだったら…
あっ、そういえば昔おじいちゃんの技術を求めて変な人達が来てたことがあったよーな…。
ティータは頭を振って嫌な想像を必死に振り払おうとするが、一度生まれてしまった不安は消えることはなかった。
……………。
「あの、ちょっと中央工房を見てきますっ!」
ティータはついにいてもたってもいられなくなり、家を飛び出し中央工房へと向かっていった。
「はぁっ、はぁっ…あのっ!おじいちゃんきてますか!?」
道中全力で走ってきたため、息を切らせながら受付に尋ねる。