空の軌跡AS
□空の軌跡AS 第2章
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「ん…。朝…か。」
部屋に差し込む木漏れ日の中、クローゼは目を覚ました。
時計を確認すると時刻は7時。起きなければと思うのだが、どうも身体の調子が悪く、起きるのも億劫だ。
いえ…悪いのは身体ではなく精神(こころ)かしら…?
クローゼは自嘲する。
病は気からという言葉があるが、今の自分にはその言葉がピッタリと当てはまる気がする。
目を閉じると昨日の記憶が甦ってくる。
ラッセル博士を救出に行ったが、結果は大失敗。結局仲間を危険に晒しただけで、己の無力を嫌という程思い知らされるという形になった。
本当にわたしは…。
「おっはよ〜!」
クローゼが自責の念にかられていると、ドアが開いて場違いに明るい声が入ってきた。
「エステルさん…。」
「クローゼ、もう朝になったわよ。ほら、起きた起きた!」
まだ起きる気分ではなかったのだが、エステルはそんなクローゼの様子には気が付いていないように無理やりにクローゼを叩き起こしてきた。
仕方なく着替えて、リビングに向かうと、途端に強烈な異臭が鼻をついてきた。
「ッ!?何…この臭い…。」
「あ、起きてきたわね。朝ご飯作っといたわよ。」
異臭はエステルの座っているテーブルの方から漂ってきていた。そしてテーブルの上に目を向けると、それはあった。
圧倒的な存在感、果たして食べ物と呼んでもいいものだろうか。グチョグチョになった紫色の物体が皿の中によそられている。
「あの…エステルさん…。これは…?」
クローゼがおそるおそる、紫色の物体を指差す。するとエステルは少し苦笑いを浮かべながら口を開いた。
「えっと、そのね…。あたし最近料理をしてなかったから…ごめん、失敗した…。」
言ってエステルは肩を落とす。
テーブルの上のそれはエステルに言われずとも、見るからに失敗だとわかる逸品だった。というより、これで成功だと言われでもしたら、困ってしまう。
「と、とにかく食べてみて!み、見た目と臭いはあれだけど、味は悪くないはずだから!………たぶん。」
最後に不穏な言葉が聞こえた気がしたのは気のせいだろうか…。