乱世
□蒼の旅人
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―・・・重い足音を引きずりながら、四国を治める主、長曽我部元親は、息も絶えだえに逃げ延びていた。
「クッ・・・っは、ァ!!!」
ガクンと躰を地面に崩れ落とし、失いそうな意識の中、這いずるように樹の根元へ躰を横たえる。
「ハッ・・・情けねぇ・・・」
必死に逃げおうしたものの、流れる血は止まらず水溜まりのように広がって行く。
もう動く事も出来ない躰。
直に追っ手もやって来る。
「―・・・西海の鬼も・・・年貢のおさめ時か・・・」
近づく足音に武器を構える力もない。
ザッ―・・・
草の分ける音に自分の死を覚悟して、顔を上げると、そこに居たのは蒼の旅装束を纏った男が無表情で立っていた。
「―・・・眼帯」
ポツ―・・・と男は言うと、俺に近づいて来てそっと眼帯を撫でた。
そう言う男も俺と反対に眼帯をしている。
「―・・・戦でか?」
「いや、・・・生まれ・・・つきだ。」
擦れた声で何とか呟いた。
「hu〜m?」
興味もなさそうな返事に、俺はどうする事も出来ずにただ黙った。
助けてくれと頼めばコイツまで狙われる。
「・・・アンタ・・・早く立ち・・・去れ・・・。」
「追われてんのか。」
「―・・・。」
沈黙を答えと思ったのか、男は深く溜め息を吐くと俺の胸に手を置いた。