乱世
□希望
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穏やかだ―・・・、何もかも。
「政宗、終わったからこっち来いよ。」
「っ、ちかー!!!」
政務をしている最中、俺は、元親の邪魔にならないように隣で大人しく本を読んでいた。
元親は最近、夜遅くまでこうして書き物をしている。
大した内容ではないと元親は笑い飛ばすが、こう毎日だと不安が募るばかりだ。
俺は元親に飛び付くように抱きついた。
「おっと。」
元親は体勢を若干後ろに傾かせたが、すぐに持ち直すと、そのまま俺を抱き抱えて布団の上にそっと下ろした。
「―・・・政宗に、とっておきの話があるんだ。」
「とっておき?」
布団を被りながら、元親は幸せそうに微笑んだ。
「明日と明後日、丸々遊んでやれる。・・・その為にずっと頑張ってたんだぜ?」
「・・・もとちか・・・っ」
俺は元親の躰に思い切り抱きついた。
瞳からは堪え切れなくなった涙が頬を伝った。
「っ、一緒に出掛けられるんだな、ちか・・・ッ、一緒に・・・」
もう二人で出掛ける事なんて出来無いと思っていた。
戦を控え、周辺地域でも緊張感が漂っており、とてもじゃないが『二人で出掛ける』事なんて夢のまた夢だと思っていた。
「あぁ、一緒に出掛けような、政宗。」
俺の髪をまるで宝物でも扱うように大切に撫でては唇を落とす元親。
「俺ッ、海に出たい!!!あ、でも山に弁当持って散歩もいい!!!」
「俺は政宗をずっと抱きしめられりゃそれでいいな・・・」
「ん、了解!!!///」
元親に抱きしめられ、抱きしめて―・・・
嗚呼もう、大好きだ。
好きで、愛しくて、肺が満ちるまで満たしたい、元親で。
満たされたら良いのに。
「久々に俺も握るか。・・・おにぎりの具は―・・・何がいいかな。梅もいいし、鮭もいい・・・」
「おかかもいいな!!!それに天むす!!!」
「飲み物は果汁を絞るか?」
「葡萄が飲みたい!!!」
明日の予定話に終わりは見えない。
久々に心が浮かれている。
早く明日がくればいいのに・・・。
いや、でも明日が来なければいいとも思う。
この気持ちがずっと続けば、毎日がきっと幸せだ。
毎日毎日、明日は何しよう、何処に行こう・・・そんな話を毎日・・・毎日・・・
「・・・宿にでも泊まって、ゆっくり城下を歩くのもいいな?」
「くくっ、元親それじゃ二日じゃ足りねぇよ?」
ふと、思い出したように溢した元親に、俺はクスクス笑った。
何処までも、幸せな会話―・・・
「ならまた頑張って時間作るまでだろ?」
挑発的に小首を傾げてニヤリと笑う元親に、言いようのない幸せが内から込み上げてくる。
「〜ッおう!!!///・・・へへ///ちかー!!///」
純粋に、ただ幸せだけを感じていた。
元親の体温も鼓動も息遣いも肌触りも―・・・全てが全て愛しい。
「じゃぁ明日は早く起きて弁当作らねぇと!!!」
「そうだなぁ・・・。よし、俺も作る。もし政宗より上手く出来たらご褒美くれるか?」
額と額をくっつけて、ねだるように元親は声を甘くした。
「ま、無理だと思うが聞いてやるよ?」
俺はクスクス笑って元親を見た。
「太陽の下で、政宗を抱きてぇ。」
「ッ、はぁ?!///・・・そ、そんな日の高い内にすんのかよ・・・///」
思いがけない言葉に顔が急激に熱る。
「―・・・きっと、太陽の光に白い太股が―」
「わぁーわぁー!!!///」
慌てて元親の口を両手で抑えた。
全く、いきなり何て話を―・・・///
「駄目、か?」
「え?・・・あ・・・ぅ///別にいいけど、よ?///」
あまりにも真剣な瞳に押されるように、俺は頷いた。
「有り難うな、政宗。」
そのまま包まれるように、ぎゅぅッと抱きしめられた。
いつもより―・・・優しく、強く・・・。
「明日は早く出るぞ政宗?」
「ン・・・今から楽しみだ///」
スリスリと額を擦り寄せれば、うっとりとした声が耳に響いた。
「―・・・幸せにしてくれて有り難うな、政宗。」
「馬鹿、俺が元親に幸せにしてもらったんだ。―・・・ちか、幸せだぜ俺。」
「政宗・・・、いつまでも一緒だ。」
「・・・ちか」
暖かな温もりに包まれて、俺は意識を手放した。