乱世

□叙情詩
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天空が、稲妻に輝く―



止まる様子のない雨が見上げた俺の瞳から流した涙を消した。

だからこそ、俺は拳を握り締めた。

「―・・・有り難う、小十郎。俺は元親を助ける。」

俺は小十郎を優しく地面に横たえると、元親の側へ走った。

「・・・もとちか」

座り、温もりの感じられない躰を膝の上に置いた。
余りにも弱々しい鼓動―・・・・・・。
もしかすると、俺の命が交換になるかもしれない。

だが例えそうなろうとも・・・。

「いや、俺も元親も助かる。―・・・生きるんだ、俺達は。」

俺は眼帯を外した。

その瞬間、ブワッと周りの風が雨を弾き返した。

躰の―・・・、血が騒ぐ。
力を使えと、誰かが俺に命令する。

「―・・・二人で戻ろう、元親・・・」

元親の胸に手を添えた瞬間、元親の躰が風に包まれ浮いた。
こんな現象は初めてだったが、痛みが、苦しみが流れ込んで来たので大丈夫だろう。
俺は目を閉じた。

息が安定すれば、何が起ころうがそれでいい。

躰の節々に痛みが重なる様に生まれていっては痛みを増していく。
重くなってゆく躰は、俺の意識を飛ばしてしまいそうな程の苦痛を惜しみ無く浴びせていく。
まるで、この雨の様に―・・・。

だがこの痛みは、苦しみは全て元親が抱えていたモノだ。
一人で、誰にも訴えられず、訴える力も無く、どんな気持ちで意識を無くしたのだろう。
祈ったのだろうか、願ったのだろうか。
生きたいと手を伸ばしただろうか、悔しさに拳を握り締めただろうか。


「・・・ック―!!!」

ピリリと手に強い痛みを感じ、目を開け見れば、俺の躰を稲光が駆けていた。

「はっ・・・ッ、グッ・・・」

バチバチと耳元に電気の弾ける音が途端に大きく聞こえ初める。


「ぁぁあああ゙ッ!!!」

ギリギリと骨が軋み、肉が裂ける様な痛みに、俺は思わず絶叫した。
そして元親の躰の上に崩れ落ちた。

「も・・・ち、か・・・ぁ」

元親からは確かにドクドクと脈打つ鼓動が確かに聞こえた。
多分もう大丈夫。

だがこの力は完全に治るまで治まらない。
先代の代わり身はその痛みに躰が食い付くされ、一人痛みに死んだと聞く。
外傷もなく、綺麗な死体だったと。
痛みの欠片すら感じられない程に―・・・。

俺はッ

俺はそんなのは嫌だ!!!


俺は生きたい―・・・

「・・・生き・・・ッ、・・・た・・・ぃ・・・」



『―・・・生きたいか・・・―』


誰だ・・・

もう瞼すら開ける力も残っていない。
俺が元親に倒れているそばからどんどんと吸い込まれて行く体力、与えられる苦痛。

痛みで躰がピクリともしない。

嗚呼、死ぬのか?

俺はまだ何にもしてない。
やっと走り出したばかりで、俺の人生は終るのか?
喜びも、楽しみも、嬉しさも知らないままに―・・・。

『―・・・生きたいか・・・―』


生きたい
俺は生きたい!!!

俺は残る意識の中、声にならない声を上げた。

『―・・・ならばその力と共に我を解放するがいい・・・―』

解放?

解放とは何だ。
解放して欲しいのは俺の方だ。

『・・・解放せよ・・・』

何、を

『・・・力を我に・・・』

嗚呼、こんなモンくれてやる。
こんな忌まわしいだけの呪われた力などッ!!!

『―・・・言ったな・・・では叶えてやろう、お前の命とその者の命、確かに与えてやろう・・・―』

「・・・っ・・・」



眩しい光に、俺は最後―・・・


瞼を開けた筈ではないが、天空に舞う巨大な龍を見た気がした―・・・。


「ッぐぁぁああああ゙ッ!!!」


その瞬間、躰中に電流が流れ、俺は意識を飛ばし闇に倒れた―・・・。


何かを思う間もなく。
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