新宿歌舞伎町パロ

□ホストクラブ西海
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一度栄えしモノは、必ずや衰えゆく

その時期を知る事もせずに其処に住まう華が、今日も咲いては朽ちてゆく

闇に笑えば内を憎み
内を笑えば闇を憎む

所詮、この世はまやかしばかり
どちらを知るも信じるも、人の心の思うがままに

手に取り転がす、此処は新宿歌舞伎町

心転がし転がされ、今日は何処に転がり込もうか













「・・・落ち着かねぇ。」

夜のネオンが足元を艶やかに照らしだす。
その中をゲッソリとした顔つきで歩くのは、元親から招待状を受け取ってしまった政宗だった。
政宗は行くと言ってしまった事を今更ながらに酷く後悔していた。

街を進めど進めど、掛けられる声に変わりはなく、非常に鬱陶しい

店に寄っていけ、可愛い子がいる、安くしておく、ホストにならないか・・・、もう耳にタコが出来そうだ。

それに耐えながら進むと、漸く元親の店が見えてきた。

『ホストクラブ西海』

煌びやかな外見は他とは類を見ない造りで圧倒感があり、そうそう気安く入れなさそうな雰囲気だ。
しかしそんな事も気にせずに男同士や女同士で次々と客が入って行く。

「・・・」

だがそんな様子を見ても政宗には中に入る勇気が足りなかった。
仮病を装って帰ろうとため息を吐いていると、後ろから軽い声が掛かってきた。

「ウチに寄ってく、綺麗なお兄さん?」
振り返ると、背の大きな人懐っこい笑みを浮かべた男が立っていた。
どうやら西海のホストらしい。
紫の肌蹴たシャツに白のスーツがいかにもって雰囲気を醸し出している。
年は政宗と同じ位に見える。
「俺、此処の西海で働いてんだぁ、お兄さん♪」
「あっそ。」
興味もなく短く答えると、腕を取られブンブンと振り回された。
「酷い酷いっ!!!興味ないって顔してるよお兄さん!!!」
「あるわけねぇだろ。」
冷たくキッパリ言い切る政宗に対し、男はそれでもニッコリした笑みを崩さない。

「でも俺は大有りなの♪久々のHitだもんっ!!俺は成実、Honeyの名前は?」
「伊達」
「違ぁーう!!!名前です、お名前聞かせて?」
駄々を捏ねる成実という男を一睨みし、ポケットから元親から貰った招待状を取り出した。
「煩ぇなぁ・・・、コレ・・・見せれば解るって言われたんだけどよ?」
それを受け取った成実の顔色が見る見るうちに青ざめる。

「なっ・・・これ兄貴のプラチナカード?!嘘ぉーアンタが?!」
「・・・そんなに驚く事なのか、矢っ張り。」

成実の驚きに頭を抱えたくなる政宗だったが、此処まで来てしまった以上は引き帰れない。

「コレ持ってるって事は、50万払ったの?!マジで?!」
信じられないと言った表情でマジマジと成実に見つめられ、ため息と同時に政宗は答えた。

「−・・・貰ったんだよ、元親に。」
「貰ったぁあ?!つうか呼び捨てって−・・・。ぅわ〜、どうしよ。 ねぇ伊達ちゃん、俺がナンパしたのアニキには黙ってて!!!マジお願い!!!」
頭を思い切り下げられ、政宗は慌てて頭を上げさせた。

「お、おいおい!!!別に言うつもりもねぇから頭上げろよ!!!」
「本当?!良かったー。アニキのお気に入りに手ぇ付けちゃぁ生きてけないからねぇ。」
さらっと吐かれた台詞にさり気なく問う。
「−・・・アイツってそんなに凄ぇの?」
「まぁ、人気も度胸も半端ないし。人柄も良くて喧嘩も強いンじゃ誰にも勝ち目ないんじゃないの? そんな事より入った入った!!!」
「お、ぅ・・・」

イマイチ納得のいかないまま、半ば引っ張られるようにして政宗は店の中へ入っていった。
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