新宿歌舞伎町パロ
□夢遊
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夢を、見ていた。
夢で夢を見ていたら、それはどちらが本物だか区別がつくのだろうか。
そもそもソレ自体が夢であって、どちらも変わらない夢だが、目が覚めた時にソレが現実だと認識しきれているのだろうか。
夢で夢を見ていたら、もう何処が出口すら解らない。
夢のような、ネオンの光
夢のような、男女の一時
夢のような、真っ黒な夜空にはネオンの光で一粒の星の瞬きさえ映らない。
−・・・嗚呼、此処は何処だろうか。
そう呟く誰かの声が、歌舞伎町にポツリと零れた。
−・・・
「目、腫れちまったな・・・」
バスルームで鏡を見ると、俺は思わず苦笑した。
泣いた事を、泣く声を掻き消したくてシャワーを浴びながら泣いたのだが、こんなに目が腫れていては意味が無い。
俺は冷凍庫からアイマスクを取り出すと、ベッドにドサッと身を沈め、ソレを目蓋の上に乗せた。
冷たいジェルが火照った目蓋に気持ち良い。
その気持ち良さのまま、何も考えずに冷えていく目蓋に意識を集中させ、落ち着きを取り戻す。
沢山泣いたためか、躰は疲れており、横になった布団が心地良い。
−・・・そして、いつの間に寝入ってしまったのか、気付けば冷たかったアイマスクはスッカリ温くなっており、俺はアイマスクを外して鏡を見に行った。
「・・・これで何とか佐助にはバレねぇですむな。」
完全に引いたわけではないが、もう少しゆっくり休めば仕事に行く頃には元通りに戻っているだろう。
アイマスクを冷凍庫にしまい、俺はまたベッドに戻った。
だが一度醒めてしまった眠りでは中々寝付かれず、嫌な事ばかり考え出してしまう。
俺はため息を吐きながら躰を起こしてテーブルの上に置いてある煙草に手を伸ばすと、ケースを振った。
「・・・?」
だが出てくるはずの煙草が出てこず、中身をよく覗いてみると殻だった。
まぁ日頃滅多に吸わないため、今まで気付かなかったのだろうが、必要な時に無いのも困る。
気晴らしになる物が他に思いつくわけ出もなく、俺は仕方なしに財布を持って部屋を出た。