新宿歌舞伎町パロ
□貴方に
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−・・・
「ん・・・」
ぼんやりと意識が覚醒していく中で、腕の中に温もりを感じて頭を傾けた。
昨日の記憶を辿ってもどうやって帰ってきたかすら覚えていない。
人の温もり、それも細身の躰に、女でも連れ込んだかと、重い頭で考えて薄ら目蓋を開いた。
カーテンが閉まっておらず、太陽の日差しが眩しく室内を照らしだしている。
自嘲気味に俺はその光に向かって笑った。
矢張り、政宗は今日も傍にいない
絶望感と、冷えていく心に悪態を吐く
−・・・いい加減にしろ、と
どうせ傍に居るのは連れ込んだ顔も覚えていない女。
記憶はない事を理由には出来ないが、こうゆう時は早めに手を打った方が無難だ。
俺は重たい躰を何とか起こし、女の顔を見た。
その、スヤスヤと安心しきって眠っている顔に、世界がピタリと止まった気がした。
「ま・・・さ・・む、ね?」
何処かの軽い女じゃなく、一緒に寝ていたのは、ずっと夢見ていた相手。
欲して止まない想い人。
「なん、で―…どうして…」
俺は必死に昨日の記憶を辿った。
何処からが現実で、何処からが夢なのか全く解らない。
覚えているようで、しかしソレは夢であるようで、混乱した頭はなんの機能も果たしてはくれない。
ただ目の前の光景に、俺は目を見張るばかりだった。
…どうして、政宗が此処に居る?
しかも一緒に寝ていたなんて、どうしたらこうなる?
まさかコレも夢−・・・なんて事、言わねぇよな?
俺は震える手で政宗の頬に触れた。
「―…あったけぇ…」
サラサラした肌触りと、確かな温もり。
「まさむね・・・」
起きて自分を見て欲しい。
だが、目が覚めれば政宗から自分は拒否されるかも知れない。
昨日だって、もしかしたら俺が無意識に政宗を連れ込んで抱いてしまったのかもしれないのだ。
十分ありえる事に、俺は泣きそうになった。
これ以上嫌われたくないのに、さらに身勝手な行動をしてしまったのかもしれない。
もしそうなれば、もう俺が嫌われる事等、決定的だ。
その目で見つめられたいが、嫌われたくはない。
矛盾な感情が心を乱す
「・・・まさむね」
でも、一度名前を呟いてしまえばそれは止めようが無くて・・・
「まさむね・・・、まさむね、まさむね…まさむね」
何も考えられずに、名前ばかりを呼んでしまう。