親政学パロ

□喧嘩 (完)
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・・・喧嘩は日常的に行なっていたが、本気になるのは初めてだった。


「「・・・・・・。」」

それでも、チャリに2ケツして、いつも遠回りにして帰る寮への帰路についている。
いつもなら馬鹿みたいな話をしながら、いつの間にか寮についているこの道も−・・・今日は長く感じている。
何が悪かったのか、今回はどちらも引くことが無く、売り言葉に買い言葉で、思いもよらない喧嘩になった。

「・・・。」

俺はいつもなら、悪態をつきながら元親に抱きついて後ろに乗るが、今日は流石に気が引け、椅子の端を掴んでいた。
元親のデカイ背中が、境界線を引かれているようで切ない。
「・・・。」
一言、たった一言謝れば良いだけの話だが・・・その一言が出てこない。
それでも反省している事を伝えたくて、恐る恐る腰に腕を回した。
「「−・・・。」」

だが、やはり何も言ってくれない。

「・・・。」
腕を放した方がいいのだろうか。
きっとまだ怒りが冷めていないはずだろう・・・。
俺は拳を握り締めた。


放したくはないが、嫌われたくなんてない。
だから今は元親の機嫌を取るのが先決だ・・・。

俺は元親に回した腕をゆっくりと解く。
「・・・。」

「−・・・危ねぇだろ。」
「ぁ・・・。」
解きかけた腕を握り締められた。

「「・・・・・・、悪ぃ。」」

お互いの声が同時に出た。
すると、元親がくくっと笑いだした。
何だか気が抜けちまって俺も一緒に笑った。

俺は緩めていた腕を強く元親に回し、耳をピタリとくっつける様に抱き締めた。
橙がこぼれるような空が見える。
耳をひっつけた元親の背中からは、暖かい心音が響き、俺のものと重なって響いている。

「−・・・何で俺等ッて一つじゃねぇんだろうな。」
背中から響いた元親の声に、顔を元親に向ける。
「だってよ、オメェがいねぇと生きていけねぇんだぜ? 2つに分かれてる意味ねぇだろ?」
いつもなら馬鹿にするそのアホくさい恥ずかしい台詞も、今日だけは素直に聞いてやる。

「一つだと、オメェとキス出来ねぇだろ?」

俺のその言葉を聞いて、珍しく元親が動転したらしく、自転車が揺れて転びそうになった。
「ッおい、危ねぇだろ?!///」
「だッ・・・て、よぉ///」
元親の耳が紅く染まっていく。
橙の赤さじゃなくて、違う紅さ。

俺はもう一度元親の背に耳をつけて抱き締めた。
トクトクと、俺より早い心音が心地よく、照れくさい。
俺の顔も・・・きっと橙に染められて、元親に染められて・・・きっと紅くなっているのだろう。

二つに分かれているから片方が恋しくなる。
それでいいじゃないか。
お互いに求め合えば、分かれていたって寂しくはないだろ?
今はそんな台詞は吐けないが、いつか・・・言える日がくるといい。
俺は強く抱き締め、元親に俺の心音を伝えてやった。
「政宗。−・・・俺、誰よりも強くなりてぇ。片割れのオメェを誰にも渡さねぇように・・・守れるように。」
「くくっ。じゃぁオメェが無理そうだったら俺が守ってやっから安心しろよ。」
「あ゙?!『俺が』守るから、オメェは大人しくついて来いよ!!!」
「ha、守られるだけはお断わりだな。」
「駄目だからな?!オメェはすぐに無理すっしよ。」
「大丈夫だ。オメェぐらい守るのなんて余裕だろ?」
「だから守るのは俺だッつってんだろ、馬鹿宗!!」
「a゙n?! 誰が馬鹿だテメェ!!」
「煩ぇ!!オメェが言う事聞かねぇからだろうが!!」


ぎゃーぎゃー騒ぐ俺たちを、誰が1つの物だなんて気付くだろうか?

きっといつも通り、いつの間にか寮に着いているのだろう。



橙が俺達を見ていた。




完−
 

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