親政学パロ

□進路(完)
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進路指導の小十郎に呼び出されたのは、3年になりたての、桜が満開の日だった。
進路指導室には、相変わらず難しい顔をしている小十郎が、書類を捲りながら座っていた。
俺はろくに挨拶もせずに室内に入ると、隣のデスクの椅子を引っ張ってドカリと座った。
「ンだよ、小十郎。」
ぶっきら棒にそう言い放つ。
「・・・あぁ、伊達か。ちょっと話があってな。」
片倉は政宗に向き直ると、一枚の書類を俺に投げて寄越した。
「an?」
その紙切れに書かれている文字は、見慣れた自分の名前ではなく、しかし見慣れたアイツの名前だった。
「−・・・スカウト?」
小十郎は俺から書類を奪い取ると、それを机の上に置き、俺を見て話しだした。

「この間、長曾我部が臨時でインターハイに出ただろ?その時にプロの監督に気に入られたみたいでな。今からでも私立に来ないかと誘われてるんだ。」
「−・・・へぇ。」

心臓が、キシリと締め付けられた。

「長曾我部には伝えたんだが、即答で断られた。だがな伊達・・・、俺は長曾我部の才能を潰すのは惜しい気がする。大体、アイツは気紛れで本気になって何かをする事が無かった奴だ。それが、バスケに本気になる事で得るものもあるだろうし、アイツの未来の道標にもなるんじゃないかと思っている。」
「そう−・・・かもな・・・。」
頭の片隅で、誰かが何かを叫んでいる声に・・・俺は耳を塞いだ。

その声を聞いてしまったら、聞いてしまったら・・・

「・・・お前からも、長曾我部に勧めてみてくれないか?」
「あぁ・・・。」
「それと、お前なんだがな。半年ぐらいホームステイしてみる気はないか?オメェだって異文化に興味あるだろ?」
「・・・あぁ。」
「行く気はあるのか?」
「−・・・あぁ・・・。」

もう、何も考えられなかった。
何もかもどうでも良くて、何もかもが色褪せていく。
俺がどうしたいか、そんな事はどうでもいいんだ。


でも
俺は、どうしたらいい?

「・・・伊達、お前等が仲が良いのは知っている。だがいずれはお互いの道を歩まなくてはならない。−・・・餓鬼じゃねぇんだ、解るな?」
「−・・・勿論だ。」

どう、したらいい。

「お前だって、長曾我部の才能を伸ばしてやりたいだろ?」
「あぁ、・・・馬鹿だし元親。」

どうしたら、いい・・・元親?

「くくっ、だろ?なら長曾我部によろしくな。で、お前のホームステイは夏休みからになるがいいか?」
「・・・あぁ、OK。」
「よし!!!話はそれだけだ、帰っていいぞ。」
膝を打って、小十郎は笑顔で俺を見た。

俺も至って平静を装い、軽く挨拶をして出ていった。

バタンとドアが閉まる。

−・・・元親。
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