親政学パロ

□嘘
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今の俺の生活の殆どが嘘だ―・・・。


「よぉ、伊達。相変わらずちっこくて見えなかッたぜ?」
「a〜ha?でかくても存在薄いンで気付かなかったな、長曽我部。」







初めて伊達と会った時から嘘ばっかりだ。

話したくて話してみても、どうしても喧嘩腰になって上手く話せた試しがない。

長く話せば殴りたくもないのに殴り合いになるし、気まずくなる。

それでも側に居たくて話し掛けたくて、また繰り返し。


まるで永遠のループだ―・・・。

胸がキリリと痛む。



―・・・ただ普通に、ゆっくり話してぇんだ。
そして・・・、皆にするように笑って欲しいだけなんだ。

俺に向けるお前の顔は、いつも怒ってたり、不機嫌だったり、苦しそうだ。

俺にだけ―・・・

そんなに嫌われてんのかな俺。

でも、どんなに嫌われてるって解っていても、変えられない気持ちがある。

嫌われても、出会えた事に感謝こそすれ、恨むなんてとんでもない。

密かに想えるだけで―・・・


それだけで



「―・・・ッくそ」

本当は尊いアンタに触れてぇよ・・・。










そんなある日―・・・
伊達に、屋上に呼び出された。
どんな理由であれ、伊達から声を掛けて貰えただけで俺はすっかり舞い上がってしまっている。

妙にソワソワして、胸がはち切れるんじゃないかって位―・・・緊張する。

なのに何でだろうな・・・

・・・ヤバイ///
顔が緩む///


伊達は屋上に着くと、フェンスに背をつけ空を見つめた。

春風にそよぐその栗色の細い髪の毛が、時々ふわりと香りを届け、俺は苦しい胸の内を隠しながら隣に同じように背を付け、煙草をふかした。

「―・・・。」

黙ったままの伊達をチラッと見れば、今はうつ向いて地面を見つめていた。


―・・・一体、なんの話だろうか?

俺はざわつく気持ちを煙草に込めて踏み潰した。



でも―・・・初めてだ。

こんなにも静かに伊達と一緒に居れるなんてまるで夢のようだ。

このまま死んだって―・・・



「好きなんだ、アンタの事。」
「―・・・へ?」
「だから、好きだ・・・長曽我部。」


思考が止まった。
いや、世界が止まったような衝撃。

伊達が俺の事好きなはずがない。
毎日喧嘩して殴り合ッて・・・
あんなにお互いに罵り合ってたんだ。


でも

でも―・・・っ




本当、に?

もしも・・・伊達が、俺の事を



本当に、好き・・・だったら?


「・・・はっ、ンな気色悪ぃ嘘・・・バレバレだっつうの。」

本当に、好き?

「―・・・ノリの悪ぃ奴だな、アンタ。少しは動揺するかと思ったけど、・・・つまんねぇから帰る。」

伊達はそう吐き捨てるようにいうと、フェンスから離れ、出ていこうとした。


嗚呼、やっぱり・・・


嘘か。

「動揺なんか―・・・するかよ。・・・ンな解りやすい嘘・・・っ」

伊達が俺の事なんか好きじゃない事位解ってたのに・・・、何を期待してしまったんだろう・・・。

情けなくて、悔しくて、切なくて・・・。
滲む視界と奪われていく力が俺をズルズルと地面に躰を落としていった。


「・・・アンタさぁ、何で素直になれねぇんだよ?」

耳の脇でガシャンとフェンスの音がし、顔を上げれば、俺は伊達の腕とフェンスに囲まれていた。

「な・・・っぁッ///」

目の前には伊達の顔が間近にあり、今にも唇が触れてしまいそうだ。

「・・・アンタ嘘が下手だ。」
「お・・・れはッ・・・テメェなんかっ///」

違う、俺が言いてぇのはっ



「アンタのそれはもう聞き飽きたんだよ。―・・・元親?」
「ッ―?!///な、まえ・・・っ///」
「嬉しいだろ?」

そう妖美に笑う伊達に見とれていると、段々と顔が近づき―・・・

「ンッ・・・///」
「・・・んっ、もと・・・ちか///」

触れるだけのキス。

だがそれは俺の閉じてたドアを開けるには充分で・・・。



「―・・・後悔しても逃がさねぇからな。」
「―?!」

ゴクンと生唾を飲み込んだ。


俺は伊達を容易く組み敷くと、高ぶる気持ちも抑えずに、飢えた獣のように伊達を余す事なく食い尽くした。
その白い肌も美しい髪も、甘い唇も、毒のような鳴き声も―・・・。

勿論、中身も全部飲み干して、俺はぐったりした伊達を抱き締めて今、幸せに浸っている。

「―・・・伊達」
「んっ・・・」

うとうとする伊達をそっと抱え、俺は帰宅を急いだ。

それは勿論―・・・


「やっぱり、ベッドでちゃんとしねぇとな?」

半ば夢心地な伊達に小さく笑いキスを落とした。




例えば世界が嘘だとして、それでも此だけは信じてる―・・・

伊達政宗を愛するこの気持ちだけは、何が揺らいでも嘘じゃない、と。


そして、これからの世界もまた、愛し合っていけると信じてる―・・・







―・・・end
 

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