親政BSR

□金魚
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夏と言えば、俺の季節と言っても過言ではない。


太陽に輝く海。
焼けた砂浜。

全てが俺の手の中にある。


そして
今日は更に、もう一つ手の中に閉じ込めたモノがあッた。

「Hey、鬼!!!早くしろ!!!」
「くくっ、そう慌てなさんな、独眼竜。祭りは逃げねぇよ?」


・・・戦場で刀を交えて以来、俺達は遠い距離にもかかわらず、良く何かに付けては会う事が多い。
今日も独眼竜が祭り好きだと聞き、夏の港で催される祭りに誘ったのだ。
俺が用意してやった淡い紫の浴衣を着て、独眼竜は早くも城下に出たいと俺を急かす。
そんな姿に、俺に少しでも心を許してくれているのではないかと期待に胸が膨らんだ。


カラコロと二人で下駄を鳴らしながら城下に赴けば、町には多くの大漁旗が道を彩り、海の漢らしい祭囃子が風を振るわせている。

「ha、如何にもアンタん所の祭って感じだな?」
「だが嫌いじゃねぇだろ?」
「勿論。何より俺ン所に似てるしな? 今度はウチに来いよ。」

綺麗に笑う独眼竜の誘いを断るつもり等、更々ない。
二つ返事で答えれば、独眼竜ははにかむ様に笑った。


道を賑わす様々な屋台に興味深気に眼を輝かせ、アレは何だコレは何だと、独眼竜は気になるはモノ全て俺に聞いてきた。
だが聞いてばかりで、独眼竜は食べもしなければ、遊びもしない。
楽しんではいる様に見えるのだが―・・・。

「・・・なぁ、何か食ったり、したりしねぇのか?」
「ah〜・・・。」

独眼竜は少し寂しそうに笑うと、ぐるっと辺りを見回した。


「コレはコイツ等の為の祭だ。俺が楽しんでちゃ・・・何か悪ぃ気がすンだよ。」
「・・・アンタなぁ。」

俺は独眼竜の頭を押さえ、額を合わせた。

「コイツ等の事を想ってくれンなら、楽しんでやってくれ。・・・それが一番だ。」
「―・・・ha。」

独眼竜は困った様に笑うと、 小さく息を吐き、今度は嬉しそうに笑ってきた。

「アレ、食いてぇ。」
「ん?」

俺は独眼竜から躰を離し、次の言葉を待った。

「あそこの、赤いヤツだ!!!行くぞ鬼!!!」

嬉しそうに俺の腕を引っ張って独眼竜が駆け出す。
その姿に漸く安心し、俺は連れられるままに足を運ばせた。

「・・・林檎飴かぁ。」
「可愛いな、コレ。」

美味そうではなく、可愛いと言う辺り、着目点の違いに小さく笑った。
だが確かに可愛い。
林檎飴を選ぶその姿が。

「お好きなのをどうぞ、兄ぃさん!!」
「選ぶのか?・・・mhu・・・。」


どれでもそんなに大差はないが、独眼竜は真剣な眼差しで一つ一つ比べている。


「コレ、俺は一番美味そうで可愛く見えるが?」
「・・・やっぱりそうだよな。ok、コレをくれ!!!」
「へぃ、有り難うございます!!!」

財布を取り出そうとした独眼竜を軽く手で制し、俺は店の店主に金を払って林檎飴を受け取った。

「ほら、独眼竜?」
「・・・いいのか?」
「俺が呼んだンだ、気にするンじゃねぇよ。」

独眼竜は俺から林檎飴を受け取ると、照れた様に頬を赤らめた。

「ン、ThankYou///」

ジィッと林檎飴を見つめ、独眼竜は幸せそうに笑っている。
本当に子供の様だ。

「なぁなぁ、食っていいか?」
「勿論。召し上がれ?」


独眼竜の赤い唇が柔らかに真っ赤な林檎飴に落ちる。

ガリッと噛むと、味わう様に口を動かし、そして呑み込むと、今度は艶やかな舌先、ペロリと飴を舐めた。

「・・・飴だな。」
「そりゃそうだ。」
「多分、食い切れねぇ・・・。」

ご期待に添えなかったらしい表情に俺は笑うと、独眼竜が食った所を一口食べた。
・・・確かに甘い。

「俺も食ってやるから無理すんなよ。甘ぇのは好きだ。」
「そうなのか?・・・じゃあ次来た時は俺が菓子を作ってやるよ。・・・ッ、今日の礼としてだ///」
「くくっ、そりゃ楽しみだな?」

奥州に出向く理由が次々と増えていきそうだと、気付かれない様に小さく笑った。

二人で飴を食べあいながら祭りを歩いていると、見慣れた姿が前方からやってきた。

「なぁ、ありゃ真田か?」
「ッ?!か、隠せ鬼!!!」
「はぁ?」
「いいからッ!!!」

慌てて俺の後ろに逃げ込んだ独眼竜を不思議に思っていれば、先に真田から声をかけられた。

「長曽我部殿ぉー!!!」
「・・・よぉ、真田と忍。」
「や、どーもぉ。」

相変わらず、真田はやかましいし、忍はヘラヘラしている。


「鬼ヶ島へようこそ。・・・アンタ等だけかぃ?」
「よくぞ聞いてくれたッ!!!」

真田は俺の肩をガシッと掴んだ。

「政宗殿と3ヶ月も前から一緒に祭りに行く約束をしていたのだが、急に重要な外交が入ったと申され、仕方なく佐助と来たのだ。」
「―・・・・・・へぇ?『重要な外交』ねぇ?」
「ッ―///」

後ろで独眼竜がビクッと躰を振るわせた。
きっと真っ赤になっているに違いない。
早くからかって遊んでみたいと唇を舐めた。

「本当だよ。今頃、『何処』で『誰』と居るか『知らない』けどね、俺様休日出勤になったンだから今度奥州に行ったら俺様といー事して貰わないと割にあわないね。」
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