保健医パロ
□猫みてぇなアイツと俺
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マンションに着き、伊達に先にシャワーを勧めると、その間俺は飯を作ることにした。
「・・・お粥って米に水入れりゃぁその内出来んだよな?」
パックの白米をレンジにかけ、出来たそれを小鍋に放り込むと、適当に水を入れて混ぜた。
そしてそれをそのままに、次は自分の晩飯である冷凍食品をレンジにかけた。
一人暮らしを始めてからというもの、飯なんざ自分で作る事なんて殆ど無かッた。
ただ、一応の物は揃えてあり、使っていないので新品同様に放置されている。
朝食はパンやコンビニ、冷凍食品で済ませ、昼は学食を利用している。
夜はその辺の飲み屋に入ったり、矢張りコンビニや冷凍食品に頼る毎日だ。
電子レンジが鳴り、晩飯のスパゲッティが出来た。
鍋をチラリと見るかぎりではまだまだ大丈夫そうなのでほッたらかしにしておこう。
多分、伊達が上がる頃あたりにでも勝手に出来てンだろ。
俺は電子レンジから飯を取出し、テーブルに置いて先に食べ始めた。
飯を食い終わると、どんなモンかと空になった皿を片手にキッチンへ向かった。
「−・・・えーと・・・」
何がどうなってこうなったのか、自分でも解らない。
だって俺は白米と水を入れ、混ぜただけなのだ。
「・・・何ぼーっとつっ立ってンだよ?」
ジャージを着て、頭をタオルで拭きながら伊達がこちらにやってきた。
「いや、そのな・・・」
「an?」
不思議そうな顔をして俺を見ると、鍋に気付いたのか中身を覗かれた。
「−・・・障子の張り替えでもすんのか?」
「いや・・・オメェの晩飯のお粥」
「ha?・・・つーかコレ食いモン?!」
物凄く・・・視線が痛い。
言いたい事はその痛い視線ぐらい解っている。
「アンタよぉ、どうしたら米がこうなんだよ? 魔法使いかアンタ」
「煩ぇなぁ!!!漢なら黙って食いやがれ!!!」
「ha?! 誰が食うかンな粘っこい液体!!! 呼吸困難で殺す気かテメェ!!!」
確かに、米が溶けて跡形もないのはちょっと悪かったと思う。
だが、考え方を変えれば噛まなくていいし、カロリー取れるし良い所ばっかじゃねぇか。
そう思ッたが、大人気ないので素直に謝ることにした。
「・・・悪かった。作り直すから座って待ってろ」
ため息を吐いて、ネバッとした液体を流しに捨てた。
「・・・いい、俺が作る」
呟かれた言葉に、一瞬聞き間違いかと思ッたが、テキパキと勝手に冷蔵庫を開け閉めしている様子から、聞き間違いではないらしい。
「・・・何、オメェ作れんの?」
「得意分野だ」
「へぇ、人は見た目じゃねぇなぁ」
そう言えば、まつ先生が、食堂を手伝いに来るって言ってたもんな。
皿洗いとかだけだと思っていたら、違うらしい。
「アンタは見た目通りだ、心配すんなよ」
視線も合わせずにキッパリ言い切られたが、返す言葉もない。
「悪ぃな!!!どーせ俺は見た目通りだろうよッ」
「別にぃ?アンタが壊滅的且つ破壊的に料理が苦手でも俺が困るわけじゃねぇからな」
淡々と冷蔵庫から牛乳だか何だかを色々だし、作り始める伊達に感心しつつも、そこまで俺は料理が下手ではない事をしっかり言っておかないと後々まで言われそうだ。
「俺だってなぁ、カレーだろ、シチューだろ? 炒飯に野菜炒め位は作れンだからな」
「何デスカそれ。小学生の家庭科の授業デスカ?」
そう来るか、この野郎。
「・・・あのな、この期時世、料理が出来なくても生きていけんだぞ、伊達」
「説得力あるな。料理出来なくても、ンなにデケェ躰に育つんだもんな」
「・・・」
・・・親の顔が見てみたいっつーのはこういう心境なんだろうな。
あと、口から生まれてきたとか、そんな言葉もコイツにはお似合いだ。
「オメェな、さっきから−」
「元親、ほら」
混ぜるのに使っていたスプーンでお粥を一掬いし、それを俺に差し出してきた。
と、いうか・・・差し出されても、コレって食えって事、だよな?
それって良く新婚生活してる新妻とか、小さい子供に食わせる時にする・・・
「おい、さっさと口開けろよ?アンタの作ったのより断然美味いぜ」
得意分野と言うだけあって、自信ありげに笑っている。
「・・・ぉ、う//」
仕方なしに、差し出されたスプーンをパクリとくわえ、粥を口に含んだ。
普通に恥ずかしいが、コイツが全く意識してねぇのが救いと言うか何と言うか−・・・
「ん・・・牛乳・・・?」
「ミルク粥。・・・不味いか?」
「いや、初めて食ったけど・・・美味い」
本当に美味くて心底驚いた。
「だろ? ほら、分けてやっから皿出せよ」
「・・・サンキュ」
飯はさっき食べたが、これならペロリと食べられそうだ。
それに、だいぶ精神的に元気になっている所に水をかけたくはなかった。