保健医パロ

□マセ餓鬼なコイツと複雑な俺
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「んっ・・・?」



ジューッだかピーだ、よく解らない音で起こされた。
頭を掻いて起き上がると、そう言えばソファーで寝ていたのだったと思い出される。

−・・・体痛ぇ。

腰を擦って立ち上がると、自然に目に入ったのはキッチンに立つ伊達の姿。
呆気にとられながら近づくと、伊達がこっちに気が付いた。

「よぉ、テーブルに座ってろよ。もう直ぐ出来っから」

機嫌良さそうにオタマで味噌汁をかき混ぜる姿が妙に様になっている。
座っていろと言われたが、俺は伊達の隣に行くと、抵抗される前に額に手を当て熱を測った。
一瞬驚いて払い除けようともされたが、火元での抵抗は矢張りしなかった。

「−・・・熱は、殆どねぇな。 気分は?」
「平気だ」
「よく眠れたか?」

頭を優しく撫でて、顔色を確かめるように見ると、伊達は顔をプイッと逸らした。

おや?と一瞬思ッたが、僅かに染まる頬に照れている事が解り、小さく笑った。
そして新聞を取りに玄関へ向かい、テーブルに着いた。

ざっと記事に目を通すと、既に出されている卵巻に手を延ばす。

「テメェ、俺の飯を目の前に新聞広げるたぁ、良い度胸じゃねぇか、an?」
「わ、悪ぃ・・・」
「それに、全部並べ終わってから手ぇ出せ。行儀がなってねぇぞアンタ」

そう言いながらコトッと最後に味噌汁を置く。

ご飯と味噌汁、サラダと余り物の炒めモン。

・・・よく冷蔵庫にこんだけ物あったな。

冷蔵庫の管理なんてしないので、何が入っているか全く解らない。
俺は新聞をしまうと、手を合わせた。

「頂きます」
「ぉう、食え」

箸を持って口に入れようとした時、伊達が麦茶だけ飲んでいるのに気が付いた。

「・・・オメェ、飯は?」
「ah〜・・・、まだ腹減らねぇし」
「後ででも良いから、ちゃんと食えよ?」
「気が向いたらな」

・・・自分が食べないのに作ってくれたのか。
少し感動しながら口に運べば、矢張り美味しくてまた感動する。

「凄ぇなオメェ。・・・全部美味い」

素直に言うと、当然とばかりにニヤリと伊達は笑った。

「ま、俺が居る1週間は美味いモン食わしてやるぜ?」

そう言うと、伊達はコップを持ちリビングに行くと、ソファーに座り首だけ俺に向けてきた。

「食器、そこ置いとけよ」

伊達は一言そう言うと、テレビに顔を向けた。

「ありがとな」

伊達に向けてそう言ったが、こちらに視線を向ける事はなかった。
俺は飯を食い終え、歯を磨き顔を洗うとスーツに着替えるべく寝室に入った。
ベッドに目をやれば、相変わらず綺麗に片付けてある。

「・・・」

出会った当初の伊達は、手のおえない悪餓鬼そのものだったが、1日ずっと行動し、何となく伊達の事が解った気がする。
強がって虚勢を張る伊達は、何処か怯えていて、でも酷く甘えたそうに見える。

完璧な武装で常に自分を守っているかのようだ。
自分の中にある、一番知られたくない何かを...

俺は担任じゃないし、そもそも教師じゃないから、何か教えることなんて出来ないし、そこまで踏み込んでいい立場なのかも微妙なところだ

でも、このまま知らない振りをして伊達の傍に居て良いとも思ってはいない

...参ったな

誰か一人に肩入れするのは良くない事だとわかってはいるが、もう遅い気がした
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