保健医パロ
□お前の闇
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電話が掛かってこなかったのに若干心配しつつも、俺はスーパーで適当に食材を買い、頼まれた苺を買って帰宅した。
「ただいまぁ。・・・伊達ぇ、買ってきたぞぉ?」
久しぶりに言った『ただいま』という言葉は返される事無く静かに部屋に響いた。
矢張り寝ているのだろうか?
朝は元気もあり、熱もなかったので油断したが、頭痛などの症状が出たのかもしれない。
俺は急いで靴を脱ぐと、部屋に入った。
『ッゥ〜・・・ッゴホッ・・・ぅッゲホッ!!!』
部屋の手前にあるトイレから嘔吐している声が聞こえてきて、俺は勢い良くドアを開いた。
そこには案の定、便器に突っ伏し、荒々しく呼吸をする伊達がいた。
慌てて背中を擦ってやれば、伊達は驚いたように俺を見たが、すぐに気持ち悪くなったのか、また突っ伏した。
−・・・
漸く、落ち着きを見せた伊達にうがいをさせると、俺はそのままベッドに伊達を庇いながら連れていった。
「・・・大丈夫か?」
「ん・・・平気だ」
「伊達−・・・」
ため息とともに名前を呼んだ。
大丈夫そうには全く見えない顔色だというのに、俺を突き放し無理矢理明るく笑顔を作る。
ここまで来ると呆れるしかない。
「大人しく寝てっから・・・出ててくれ」
俯いて弱々しい声が零れる。
何でそこまで強がるのか、本当は甘えたいくせにどうして拒否するのか解らない。
それとも、・・・甘え方を知らないのか?
「なぁ、伊達?・・・確かに昨日今日会ったばっかだけどよ・・・。俺は心底心配してんだぜ?」
「・・・」
「俺の事、信用しろとは言わねぇよ。 でも・・・無理して欲しくねぇんだ、解れよ」
そっと、伊達の隣に座る。
「具合・・・、どうなんだ?」
俺は覗くように伊達の顔色を見た。
「−・・・頭、痛ぇし・・・気持ち悪かったから、薬飲んだ」
「どっちを、何時頃に飲んだ?」
「・・・」
言いにくそうに伊達は上目で俺をチラリと見た。
まさか、とは思うが−・・・
「朝から、か?俺が行ってからすぐに?」
「・・・・・・まぁ、そんなとこ」
「・・・」
頷いてはいるものの、目は逸らされ泳いでいる。
「・・・本当は俺がいる頃からじゃねぇのか?」
「ッ、違う!!!それは・・・・違う、その・・・・っ」
泣きそうな顔で俺を見上げてくる顔は、何だか年より幼く見え、そして怯えているように見える。
俺はそっと頭を撫でると、そのまま優しく包むように抱き締めた。
すると、伊達は珍しく素直にされるがままでいてくれた。
「それで、薬は何時頃飲んだんだ?」
「・・・出てってから、すぐ両方・・・」
両方なんて、随分と無茶な飲み方をしたもんだ。
・・・それ程辛かったのだろう
「それから何か食べたか?」
フルフルと首を振り、押し黙っている。
伊達の話を聞く限りだと、腹に何も入っていない状態で、しかも睡眠作用のある異なる薬を一気に多く含んだために、睡眠から醒め起き上がった際の眩暈が嘔吐感を呼んだのだろう。
しかし吐くものもないため、喘ぐしか出来ずかなり苦しんだはずだ。
事実、伊達はぐたりとしている。
電話さえ、してくれていれば・・・
いや、俺が朝に気付いていれば伊達に辛い思いをさせずに済んだ。
「ごめんな、俺のせいで・・・。苦しかッたろ、頑張ったな」
何だか、自分が酷く情けなく思いきつく伊達を抱き締めた。
「−・・・何でだよ」
「?」
伊達は乱暴に腕を振り払い、勢い良く立ち上がると俺から距離を置いた。
「呆れたッて・・・っ面倒見切れねぇってそう言えよ!!!突き放せよ俺の事ッ−・・・」
俺を睨むと、伊達はすぐに視線を逸らし俯いた。
あぁ・・・
本当に不器用な奴
自分で自分を傷つけて、助けを求める事しか出来ないのか。
強く握り締められている拳が震えている。