保健医パロ
□保健医
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食器を片付け終わると、俺は一眠りするべくベッドに横になった。
躰の体調は上がってきているが、ずっと食べなかったり横になりっぱなしだったりしたので躰が重く怠い。
布団を捲って潜り込めば、アノ保健医の煙草やシャンプーの匂いが仄かに香ッてくる。
−・・・その香に、何だか目眩がする
思えば新任早々から、見た目も気風も伴ってすぐに学校のアイドルと化した目立つ男だった。
元から目立つような人間は好きじゃないので、どんなに勧められても会いに行かなかったし、そこまでの興味も無かった。
あるとすれば、自分と同じ眼帯についてだけだった。
自分と同じ病気か、事故か−・・・
だがそんな事を考えたのは一瞬だけで、休憩時間の度に生徒の群がっている保健室を見れば嘲笑していた。
−・・・それが、今はどうか
別に、人前で表情や感情を演じようとは、大人になってから無くなっていたように思う。
ただ、小学3年の時に両親を事故で無くしてからは育ての親に気を遣う生活をしていた為、無理をしていたのは事実だ。
しかし育ての親にいつまでも気を遣ッていた訳ではない。
本気に良く面倒を見てくれ、俺が育ての親の為に一人で出来る事は何でもやろうと心に決めてきたのだ。
あまりの過保護ぶりに、心配を掛けさせる事もしないように努力してきた。
その生活に満足している、そう思ッていた。
それをあの男は『素直になれ』だの、『甘えろ』だの抜かしてくる。
そんなモノ、そんな記憶−・・・俺の中には消えてなくなっていた。
いや、・・・元から少なかったのかもしれないが。
俺はスッと目を閉じた。
朝は少し早く起きたのでまだ眠たい。
あの男の目は・・・
閉じた瞼の裏に、あの男が映る。
あの、男の目は何もかも見透かしているようで酷く居心地が悪かった。
初めて保健室に行った時、勿論あの男に触れられたくなかったし、診られたくもなかったので、俺は避ける様にアイツを睨んでやったのを覚えている。
保健医なんて誰も適当に処置し、後は専門医に押しつけて終わりだと思ッていたが、あの男は違った。
病人だというのに力づくで寝かし付けるわ、薬飲ますわ、挙げ句家に隔離するわ−・・・。
本当、どこまでも変り者だ。
どうやら勝手に学校には病院に入院している事になっているし、俺の身内にも連絡していないらしい。
多分、俺が拒み嫌がる事を見越しての配慮・・・なのだろう。
あの男の人を寄せ付ける所は、心の内を見抜く力があるため・・・という事もあるのだろう。