日記小咄
□その他
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海賊×引き込み
海賊は仕事柄、女に触れる機会が少ない。
従って寄った町では大概誰もが花町に行くのだ。
それは俺とて例外ではなく、欲は溜まりきって早く女を抱きたくて仕方ない。
だが俺にもこだわりはある。
誰かれ構わず抱きたいとは思わない。
自分の趣味が見つからなければ帰って一人でシた方がましってモンだ。
「―・・・へぇ・・・何だか品がいいな、この花町は。」
歩きながら俺はそんな感想を溢した。
商売道具の女が生き生きとしている。
客も荒くれモンは見当たらない。
客引きの男衆も、女を下に見る所か自慢気に接客する姿はさながら親馬鹿を思わせる。
「くくっ、・・・変な花町だ。」
だが悪くはない。
「―・・・『変』かい、海賊の兄ぃさん?」
透き通った声がガヤガヤとした町からスッ―と耳に届いた。
振り返って見れば、客引きらしい男が立っている。
花町らしい、艶やかさを纏って―・・・。
瞳は吸い寄せられるようにその赤い唇や漆黒の瞳から離す事が出来ない。
「花町ってのはもっと欲濡れだろ?だが此処はどうやらそうでもねぇみてぇとみた。」
素直に感想を言えば男はクスクスと笑った。
その笑いですら色っぽく見えるのはこの町の空気のせいか、俺が欲を持っているせいか・・・。
「此処じゃな?男より女が強ぇンだよ。男が、遊ばれる。それがこの町だ。この町を荒らす奴ァ、問答無用で立ち去って貰うから、遊ぶンならそのつもりでいろよ、海賊の兄ぃさん?」
挑発的な強い眼差しは俺の心臓を深々と刺し、俺の息の根を止めた。
刺された心臓がジクジクと熱い―・・・。
「なぁアンタ。」
「ah?」
俺は男に近づいた。
「―・・・遊びてぇンだけど、何処がいい?」
「ah〜・・・、俺はな、此処を仕切る棟梁だ。何処がいいなンざ言えねぇな?」
きっぱりと言った男に、今度は俺がクスクスと笑った。
「俺はアンタと遊びてぇから、アンタの好きな場所に行きてぇンだよ。別に抱かれたくねぇンならそれでもいい。―・・・今夜は、アンタを側に置いときてぇンだよ。」
月より妖しく艶やかな白い肌を纏うこの男を。
愛でるだけでも価値がある。
「・・・くくっ、あははは!!!いいねぇアンタ、面白ぇ。」
男は一頻り笑った後、俺の首に腕を回してきた。
「―・・・俺は非売品だぜ?さぞかし可愛がってくれンだろうな?」
耳元で囁かれる甘言に躰の奥から震えがきた。
嗚呼、コレだ。
俺はコレをずっと探していた。
「アンタを退屈にはさせねぇよ。・・・アンタ名前は?」
「ン、政宗って呼べ。」
「くくっ、可愛いな政宗? 俺は元親だ。」
夜の華に惑わされ、堕ち行く夜も悪くはない―・・・。
(オシマイ)