乱世
□痛み
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―・・・
忍から連れて来られたのは、近場の民宿であった。
無言のまま部屋に通されれば、唸めき声とともに布団に横になっている若い男が目に止まる。
俺より若いか、同じ位だろう。
苦しそうにキツク瞼を閉じ、痛みを堪えるために布をギュッと握り締めている。
熱もあるのか熱った顔に汗が滲み、熱い息遣いが荒い。
―・・・この苦しみを、今から我が身に移させる。
此処まで酷いと力を解除して挑まなくてはならなそうだ。
「―・・・どう?・・・旦那は助かるの?」
心配そうな声を出す忍を見ずに、俺は病人の前に座った。
そして布団を捲ると男の胸元を肌蹴させた。
「名前・・・」
ボンヤリと聞いていたからコイツの名前を忘れちまった。
別段興味もないが、元親が好きな奴の名前位知っておいてもいいだろう。
「旦那の名前?『真田幸村』だよ。」
「―・・・。」
元親はコイツの事を何と呼んでいるのだろうか?
呼び捨て?
それとももっと何か―・・・
「ッ、ねぇ早く治してあげてよ!!!」
切迫詰まった声で思考は途切れる。
「煩ぇな。―・・・心配しなくてもすぐよくしてやるよ。」
俺は眼帯に手をかけた。
確かに俺の右目は見えないが、眼帯は俺の強すぎる力を抑えるためのモノに過ぎない。