乱世
□蒼の旅人
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「―・・・回復したら構わず逃げな。」
「・・・?」
治療してくれるのかと思えば、そうではなく、男はその態勢のまま固まっている。
だが暫くすると、暖かいモノがジワジワと体内を巡り、躰を軽くしていった。
「クッ・・・」
躰が解らない力によってほぼ回復した頃、男は苦しげに顔を歪め荒く呼吸し始めた。
「お、おい?!」
そしていきなり崩れ落ちた男を慌てて俺は抱き留めた。
「い・・・から・・・構う・・・な」
まるで先ほどまでの自分を思い起こさせる。
そこである記憶が脳から引きずり出された。
「まさかアンタ『代わり身』か?!」
「―・・・shit」
「初めて見たが―・・・」
北の国で日本を束ねる陰陽師が居ると聞いた事がある。
その主は反魂の術を使うとか―・・・。
「テメェ、―・・・俺を囲うつもりか。」
眼光鋭く睨まれ、身が一瞬怯む。
だが疑いをかけられては堪らない。
「違ぇ!!! アンタの苦しみをどうすりゃいいか考えてたんだよ!!!」
見た所、外傷なく、ただひたすらに苦しんでいる。
「―・・・なら・・・ほっとけ・・・、直に治る。」
「ンな事言われて放っておけるか!!!」
俺は男を抱きしめ立ち上がると、負担をかけさせない程度に出来る限り早く城に向けて走り出した。