乱世

□叙情詩
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―・・・。






柔らかな温もりに、ぼんやりと瞼が開く。
さらさらと頭を撫でられる感覚に俺は覚醒すると、ハッと顔を上げて元親を見た。


「―・・・よぉ、別嬪さん?悪夢からはもう目覚めたかぃ?」
「も・・・ちかっ・・・」

それはいつもの朝の目覚めの様に自然で

「もとちかっ・・・」

当たり前の様に瞳を開けていて


「おはよう、政宗・・・。漸く、夜が開けたな?」

優しく俺だけを見つめる力強い瞳


「っ―元親ぁあ!!!」

俺は元親に被さる様に抱きつくと、その心音を確かめるべく、胸に耳を押し当てた。

―・・・トクントクンと確かな鼓動が規則正しく、生きている事を証明している。


「生きてる・・・っ、生きてるんだよな、・・・俺達っ・・・」


本当に奇跡としか思えなかった。
俺の体力が底をつき、元親を置いて一人ぼっちで死んでしまうのかと絶望した。

この辛さを誰にも理解されずに、安らかに死んだと思われて・・・。

「―・・・あぁ、俺達はまた元の生活に戻れるんだ。生き抜いて、この時を手に掴んだんだ、政宗。」
「ン、そうだよな・・・」

二人の時を取り返した。

乱世とゆう狂った時代から、救いだしたのだ。


元親の手が、暖かく俺を撫でた。

・・・太陽の光に銀色の髪が反射し、眩しい元親の笑顔を更に綺麗にしている。

その笑顔に、漸く長く続いた争いが終わった事を理解した。



余りにも沢山の人が死に、大地に崩れ落ちた争い。

何も知らず、乱世を怨み、憎み、痛みに苦痛に縛られていた俺が、元親に出会い、愛を初めて知った乱世―・・・。


生きたいと、生きて欲しいと願った乱世。

人は罪深い。
何人死のうが、生きている事を喜び合う。
この日の記憶も薄れ、愛しあい、季節は色を変えながらも何度も何事もなかったかのように、知らない振りをして巡ってくる。
そんな中を、それでも幸せを感じて生きて行けるのだ。

人は

本当に愚かで、罪深く


どうしようもなく


愛しい存在。



「―・・・なぁ、政宗。この髪・・・どうしたんだ?」
「ぇ?」

元親はうっとりと俺の髪を見つめながら優しく聞いてきた。
何の事かと思い、髪を少し抓んで見てみると、それは見慣れた色をしていた。

元親と、同じ銀色。

「政宗には悪ぃが、その髪の色、酷く似合って綺麗だ。・・・それに、お揃いが増えて俺は嬉しい。」

熱の篭った言葉と視線に、俺の躰は早くも元親を求めてビクビクしている。

「・・・何か、俺の髪じゃねぇみてぇ。」

欲しいと思っていた綺麗な銀色。
だが実際に手に入れてみると、ちょっと照れ臭く、でもやっぱり幸せだった。

「どれ、もっと良く顔を見せてくれよ、政宗。」

元親は起き上がると、俺の頬を両手で包んだ。

「―・・・少し見ねぇ間に随分と艶っぽくなったンじゃねぇか?」
「ばーろぉ、元親が欲求不満なだけだろ?!///」
「くくっ、違いねぇ。」

暖かい唇が、俺の額や頬、瞼に落ちる。
その度に躰に熱が宿り、顔も首も赤く染まって居るだろう事が想像できた。



「―・・・こりゃ・・・また・・」
「・・・ちか?」

唇を離した元親が、俺の右目を食い入る様に見入っていた。
何かおかしい所がまだあるのだろうか。
若干不安が残る。

多分、髪の色が抜けたのは俺を形成していた力が無くなったからだと思う。

俺は普通に生まれて来てはいない。
代わり身が必要だったから呪術で孕ませた子なのだ。
力が失われれば、何かしらは起こるだろうとは思っていた。

ふと、考える様子を見せていた元親が口を開いた。

「―・・・ちょっと試してみていいか?」
「ぇ?・・・っ、ぅあ?!///」

元親はそう言うと、無遠慮に俺の着物の中に手を入れ、カリコリと胸の突起をイジリ始めた。

「ンッ―・・・///っ、な・・・に?///」

久々の快感に、躰は素直に喜ぶが、頭は元親の行動を疑問に感じ手を止めさせろと警告している。

その二つに挟まれ、俺はどうしていいか解らずに、ただ熱る瞳で元親を見上げた。

「やっぱりな。・・・へぇ?」


クスクス笑うと、元親は服から手を取り出し、俺の顎を掬うと、実に楽しそうに顔を綻ばせた。

「・・・その右目、躰に熱を感じると金色に変わっていくみてぇだな?・・・宝石より綺麗だぜ、政宗・・・。」

そう言うと、元親は俺を強い力で抱きしめてきた。

「何かよぉ、俺だけこんなにご褒美貰っちまっていいのかね・・・。」

ぎゅぅ、と苦しい位の抱擁だが、元親の心底幸せそうな声を聞かされれば仕方ないかと思ってしまう。
俺だって幸せなんだから。


「にしても、何でこうなったンだ?・・・力、使ってくれたンだよな?」

一転、悲しそうに元親が俺を見つめる。
それに苦笑すると、俺は元親の頬に手を添えた。


「・・・神様が、助けてくれたみてぇなんだ。俺の力も、食っちまった。・・・だから多分、こうなったンじゃねぇかな?・・・元親のせいじゃねぇし、何よりこの姿が気に入っちまったしな、俺。」
「まさむね・・・。そうか、力も・・・、良かった政宗、本当に良かった・・・ッ―・・・」
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