新宿歌舞伎町パロ

□寝物語
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空が、広い










「政宗殿ぉおおおお!!」
「おう、幸村!!今週から日勤だな」
「はい!やはり、日勤の方がヤル気が出るでござる!」
「朝が強ぇからな、幸村は」


生まれ育った仙台に帰ってきて、一年をそろそろ過ぎる

小十郎の料亭で働き、毎日が修行の厳しい世界
だが、色々忘れられていい気がした

小十郎の提案で、取るものもとらずに仙台へ来た

アドレスも、番号も、携帯会社すら変えて、俺は何事も無かったように日々を過ごしている

そこまでしないと、決心が鈍ると小十郎が言ったからだった

ただ、小十郎と佐助だけは、繋がっている

俺だって、いつかは戻るつもりでいるが、決心がつかないのも事実だ

きっと、以前より仲良くなっているだろう二人を見て、俺は嫉妬しないでいられるのか...

まだそれは、無理なような気がした

それに、もしかしたら、元親は俺の代わりに三成と...

「政宗殿?顔色が優れませぬが...」
「あ、あぁ...悪い...」
「.........政宗殿が、ずっと此所に居てくだされば、皆、喜ぶと思うのでござる...」
「幸村...」

幸村は勘が鋭い

核心を得ていなくても、何か分かるんだろう

「行かないでくだされ...。政宗殿を苦しめる場所へは、戻したくござらん」
「...大丈夫だ」

何が大丈夫なのか、自分にも解らない

逃げて来たのは自分で、成長したら戻るつもりでいたけれど、此所はあまりにも居心地が良すぎた...

俺を鍛えてくれる人がいて、気兼ねのない友人がいて、当然、家族もいる

家に帰れば、温かな家族の愛に包まれ、甘えたがりな弟に構ってやり、そして、また朝になれば仕事

あの頃の生活とは真逆だ

「政宗殿、今日も頑張りましょうぞ!」
「そうだな」

戻るか、戻らないかは、時が解決してくれる

今は、俺の代わりが居ないこの場所で生きると決めた
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