新宿歌舞伎町パロ

□招待状
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「―…っ?!///」
「・・・アンタ、香水しねぇんだな。ホストにしちゃ珍しいンじゃねぇの?」
政宗の思った通り、元親からは香水の匂いは全くしなかった。
大概のホストは高いブランドの香水をつけ、女に自分の香を嗜ますものだ。

「・・・香水とか、あんま好きじゃねぇんだよ」
「ふぅん?」
納得したのか政宗は身を引くと、また休みなく手を動かしはじめた。

「−・・・アンタからは・・・、いい香りがする」

ポツッと呟かれた声に政宗は顔を上げて元親を見た。
「香水なんざ付けてねぇけど?」
「髪から甘いシャンプーの匂いしてきたぜ?」
政宗はキョトンとした顔をすると、自分の髪を少し摘みチラッと見た。
「そんなに香ったか?」
「そうだな・・・、こうやって近づけば香る程度にな?」

元親は立ち上がると政宗の頭をグイッと引き寄せ鼻先を政宗の髪に埋めた。

「ちょっ・・・?!///」
「ん・・・、いい匂いだ。」


ベッチィーン!!!



景気のいい音と共に、元親が頭を抱えて床に蹲った。
その光景をハリセンを持った佐助が黒い笑みで見下ろしている。
「ッ、痛ぇなぁ!!!客に何しやがる!!!」
「アンタね、ウチの子に何やってんの。腐る程毎日言ってるけど、ウチ基本的にそうゆう店じゃないから。今日も別料金しっかりと貰うからね?」
「払えばいいんだろ払えば!!!ったく・・・」
ムスッとしながら元親は椅子に腰を掛け直すと、ご飯を口に掻き込んだ。
佐助のハリセンは俺も良く喰らっていたから痛さは解る

…一応、客なんだがなぁ、コイツ

政宗は苦笑すると、そっと元親に味噌汁を出した。
「・・・頼んでねぇけど?」
不思議そうに元親が首を傾ける
「佐助のハリセン、マジ痛ぇからサービス。・・・これは今朝俺が作ったやつだから」

元親は暫く味噌汁をじっと見詰めてから、政宗を見上げた。
「―…本当、俺こんな奥さん欲しいんだぜ・・・?」
妙に真剣なその顔に、政宗は眉を寄せ、ため息混じりに元親を見た。
どうにも、ホストの言葉は甘ったるくて信憑性に欠ける

「はぁ・・・、アンタ、根っからのホストだな?」
呆れながら政宗が言えば、元親は慌てて言葉を紡いだ。

「口説くとかじゃなくて、本気でそう思ったんだぜ?!・・・心からの、言葉だ。」
「han、OKそうゆう事にしといてやるよ。」
笑いながら受け流す政宗に、元親は顔をしかめると何を思いついたのか、財布から名刺のようなカードを取出し政宗に差し出した。

「an?…何だよコレ。」
「俺からの招待状。 今度休みの時、俺の所に来てくれよ。そしたら『口説き』ってのを見せてやる。」

真剣な表情の元親とカードを政宗は交互に見る。

「いや、別に見せてもらわなくてもいいし。」
「それじゃぁ俺の腹の虫が収まんねぇ。」
若干怒り気味の元親に政宗は内心ため息を吐くと順に謝った。

「笑って悪ぃ。どうも偏見があンだよ『ホスト』ってのに。・・・勘弁してくれ」
軽く頭を下げると、それを慌てて元親は手で制した。
「あ、…いやそこまで怒っちゃいねぇよ。―…俺も悪かった。 でもよ、本気で遊びに来て貰いてぇんだ。このカード、特別なんだぜ?」
元親はすまなそうに謝ると、次には得意顔になった。

「特別?」
「そ、コレはお得意様御用達なんだぜ? 一枚、いくらだと思う?」

ニヤニヤ笑う元親に、政宗は首を傾ける。
「つうか何だよコレ。」
「俺からの招待状。 コレを持ってきたお客様には、来店から帰宅するまで俺がつきっきりで相手をすンだよ。」
「・・・へぇ? No,1ホストがねぇ」
No,1ホストが付きっきりともなれば、相当の金額なのだろう。
しかし、政宗にはホストの金銭感覚など微塵もない。
こんな紙切れ、と思いながら政宗は思考を巡らせた。
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