新宿歌舞伎町パロ
□貴方に
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相変わらずの白い肌、濡れたようにしっとりと艶のある黒髪、長い睫毛―…
花びらのような唇は、紅くどこまでも可憐だ
「−・・・まさむね」
そしてその名は俺を狂おしく掻き乱す。
「ん−・・・、もとちか?」
「っ・・・ぁ・・・」
政宗の目がぼんやりと俺を捉えると、優しく目を細めた。
それは夢でも見た事のないような、優しく温かい笑み
「−・・・夢じゃないぜ、元親。 約束しただろ?・・・目が覚めても傍に居るって。」
綺麗に微笑まれ、頷く事しか出来ない。
なんせ今まで見てきた笑顔よりも数倍綺麗なのだ
その美しさに呑み込まれそうな思考の中、政宗の声がゆっくりと紡がれる。
「なぁ、元親。−・・・俺は自分を好きになった事は一度もねぇ。見えない右目も、力はあンのに女みてぇな躰も、可愛くねぇ性格も、皆大嫌いだ。 だからアンタの言葉なんざ微塵も信じちゃいなかったし、ホストの言葉なんざ信じる価値もねぇと思っていた」
政宗の言葉にキリリと胸が痛む。
それをグッと我慢して次の言葉を待った。
「−・・・でも、何でだろうな。・・・段々、アンタを信じてしまう自分が出てきて、でもそれを認めたくなくて、いつの間にか必死になって足掻いてた。・・・傷つきたくなかったんだ、俺。 アンタに裏切られんのが、恐かった」
茫然としている俺に政宗は困ったように笑うと、俺の首にするりと腕を回してきた。
「でも結局アンタに負けちまった。・・・アンタを愛している自分を、もう無視できなくなっちまった」
「まさ・・・むね・・・今の…」
次々と出てくる予想もしていなかった言葉に、頭は真っ白になり、思考の全てをストップさせた。
欲しかった言葉なのに、夢見た言葉なのに、いざ言われて、改めてその破壊力を思い知った
―…死ぬほど焦がれた相手に、好きと言われる
いや、もう死んでいるんじゃないだろうか
脳はただ政宗の言葉を何度もしつこく繰り返すだけ。
だが思い繰り返す言葉に比例して心は熱く満たされ、溢れだし、まるで血液のように躰に循っていく。
・・・冷えていた躰に、漸く熱が戻ってきた。
「夢、・・・じゃねぇよな?」
嫌われるとばかり思っていたのに、政宗から出てくる言葉はどれもソレを否定するものだった。
都合が良過ぎるこの現状は、夢であってもおかしくはない。
「ホッペ、つねってやろうか?」
まだ疑っているとバレているのか、政宗は意地悪そうにそう言った
その言葉に頷くと、政宗の腕が俺の頬に降りてきて思い切りつねられた。
「〜〜ッ、痛ぇ!!!」
「くくっあっはっは、そりゃ強くつねったからな?」
くすくす楽しそうに笑う愛しい人を、どれ位ぶりに見たのだろうか。
ましてや、声を立てて笑うなど
冷えていた心は今は熱く、眩暈すら覚える
「・・・現実、なんだよな」
「あぁ・・・」
目の前にある、欲して止まなかった愛しい人。
それが漸く手に入った。
恐る恐る抱き締めた身体は細く、懐かしい政宗の香りがした
やっと、逢えた…
「政宗・・・。この気持ちをどう言葉に乗せていいか解らねぇ・・・。情けねぇよな?…ホストで培った台詞なんざ、所詮『台詞』でしかねぇ…。伝えたい言葉は山程あンのに、どれもまだ足りねぇんだ。 …だから政宗、俺なりにアンタに伝えていいか?」
「?・・・元親なりに?」
「あぁ・・・、俺なり・・だ」
そう言いながら政宗に顔を近付け、その紅い熟れた唇を口に含んだ。
舐めた実はとろけるように甘く、食らう程に汁が溢れて政宗の頬を焦れったく伝った。
果汁の水音が生々しく音を立て、部屋を甘い香で満たしていく―…
俺は溜まった果汁をジュルリと飲み込むと、また直ぐに深く食らい付いた。
「・・・はぁっ・・・ン///」
政宗の熱の籠もった声で、夢中に食らったkissから意識が戻った。
「・・・伝わったか、政宗?」
ゆっくりと唇を放し、耳まで真っ赤に染まる政宗を見つめた。
「・・・食われてんのかと思った///」
その言葉に思わずニヤリと笑ってしまう。
「まぁ、違ぇねぇけど。今のは言葉に出来ねぇ政宗への俺の気持ち。」
俺は政宗の耳元へ唇を寄せると、自然と出る熱い息と一緒に政宗に囁いた。
「・・・だから食らうのは今から、・・・じゃぁ、駄目か・・・まさむね?」
ゆっくり囁く度に、政宗の躰はビクビクと可愛く反応を示す政宗に、堪らずゴクンと生唾を飲み込んだ。