親政学パロ

□進路(完)
2ページ/5ページ

嗚呼、それからどうやって寮まで着いたのか覚えていない。
西日が差し込む明るい部屋に、どんどんと影が忍び寄ってくる。
そのうち真っ暗になって、俺ごと消えてしまえばいい−・・・。
何もかも消えてしまえば、俺は楽になれるんだろうか?
何度も頭は小十郎の台詞を繰り返す。

元親の才能・元親のため・元親の将来・・・お互いの、道。

頭がおかしくなりそうだった。

でも、俺がすべき事だけは−・・・決心がついた。

元親の才能は、既に将来を明るく照らしだしていた。
それを後押しするのは俺の役目。
俺にしか出来ない・・・俺だけの役目なんだ。
元親のために、元親の幸せのために俺が出来る事は、お互いに別々の道を歩む事。
そうだ、早いか遅いかの違いだけじゃないか。

いつの間にか、部屋は真っ暗になって、俺は自分が何処にいるのかもおぼろげになった。
何処でも良いような気がしてきた。

すると・・・パチッと音がして、一気に部屋が明るくなる。

「−・・・ん?おぉ、何だいるんじゃねぇか政宗。」
元親は勉強机でぼぅっとしていた俺を後ろから抱き締めてきた。
「ただいま、政宗。・・・どうした、寂しかったのか?」
元親の温もりと、暖かい優しい声が胸に突き刺さって痛い。
目にじわじわと広がる生温い液体が、零れ落ちたいと叫んでも、俺は必死に堪えてそれを許さなかった。

「政宗、俺は寂しかったぜ?ったくよぉ、生徒会長になったからって、いきなり色々託されても困るっつーのな!?!」
わざと怒ったようにそう言って、元親は俺の肩に顔を埋めて首に噛り付いてきた。
「ッはっ・・・」
求めてくる元親が、今は酷く辛い。

堪えて、堪えて・・・声が震えそうなのに、そんな声なんて出そうものなら−・・・コイツにいらねぇ心配かけちまう。
「ん−・・・vVまさむねぇvV」
元親の指は俺のYシャツのボタンを器用に外していく。
俺はその手を掴むと、俯いて話しだした。
震えないように、しっかりと息を吸い込む。

「−・・・バスケ好きか?」
「ぁ??そうだな、スポーツの中じゃ一番だな。でもンなもんより俺は−」
「私立行けよ、元親。俺もホームステイに行くし、よ。」
「−・・・ぇ?」
元親の動きが止まる。
「オメェは馬鹿だからッ・・・からだ使う以外、何やっても駄目じゃねぇか。はは・・・アンタにゃピッタリだと思うぜ?」
声が喉に張りついて痛い。
−・・痛くて、涙が出てくる。

「は−・・・はは、そりゃ酷ぇ言い草だな・・・。」
「・・・夏休みから俺、行くから。そんで・・・合ってたらそのまま暮らそうかと思ってんだ。」
「・・・そ、か。・・・まぁ、お前寂しがり屋だし、いつでも帰ってこいよ。」
「あぁ。−・・・だからよ、元親。オメェも−」
「俺も、実は・・・行こうかと思ってたんだ私立。でもよぉ、オメェに泣き付かれたら困るしなーとか思ってよ!!はっはっは、まぁそんな心配は要らなかったみてぇだけどな・・・。」

あぁ、ヤッパリ行っちまうのかオメェは。
俺がいっつも心配ばっかかけっから、俺のせいで決めかねて・・・。
ゴメン、元親。
ゴメン、俺のせいで危うくオメェの人生駄目にすっとこだった。

でも、もういいから。


「もと−」
「あー、何か喉乾かねぇ?俺、何か飲みモン買ってくるわ。オメェはいつものでいいだろ?じゃ−・・・行ってくる。」

温もりが去って、バタンとドアが閉まる音が聞こえた。
明るい室内で見えるものは、どれもお互い一緒に使っているものばかりで、俺だけの物は少ない。
そこにポタポタと落ちるのは、俺の情けない気持ちだった。

「はッ・・・くっ。」

唇を噛んでも、拳を握っても、机の上に落ちていく俺の情けない気持ち。

俺は、元親の気持ちなんか本当は望んでいないんだ。
元親の傍にずっと居たかったんだ。
ずっと俺の傍に居てほしかった。

「さッ・・・みしいにっ・・・くッ−・・・決まってんだろ!!!」

傍に居ないと生きていけない位好きだった。

好きになってたんだ、元親。



でも、さよなら。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ