親政学パロ

□偽りの幸せ
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 ずっと気に掛けていた奴がいた。
そいつは特に友人に困っているわけでもなく、勉強が出来ないわけでもなく、容姿が悪いわけでもない。

寧ろ好戦的な友人を率い、勉強などせずとも難なくこなし、澄ました顔は無愛想でも綺麗なものだ。



 長曾我部元親は屋上に続く階段をゆったりと上っていった。
特に焦る必要もない。
今は3時間目に入ったばかりという微妙な時間帯で、生徒はそれぞれの教室で授業を受けている。
中には長曾我部と同じようにサボっている生徒もごく少数いるが、曲者ばかりの教師陣では中々サボる事は難しい。
抜け出せるのは、大概問題児ばかりだった。




 キィと古びた音と共に屋上のドアが開いた。

空は適度に真っ白い雲が転がる青空で、頬吹く風は生温く心地よい。
その風を受けながら長曾我部はスタスタと目標に向かって歩いていった。
フェンスに寄り掛かり煙草を吸う、伊達政宗の元へ。


「よぉ、いい天気だな。」
「−・・・。」 
長曾我部は伊達の目の前に立つと、にっかりと笑って微笑んだ。
「つうかオメェ煙草吸うんだな。 俺にも1本くれねぇ?」
「・・・。」
伊達はだるそうにふぅっと紫煙を吐き出すと、吸っていた煙草をコンクリートに押しつけ、ズボンから煙草ね箱を取り出すとその場に置き、立ち上がった。
「−・・・邪魔だ。」
「ん? おぉ、悪ぃ。」
伊達は長曾我部を一瞥すると、するりと長曾我部を追い越した。

「・・・最近、元気ねぇんじゃねぇの、アンタ。」
長曾我部はコンクリートに置かれた煙草を拾い上げると、伊達に向き直った。
しかし伊達はただ立ち止まっただけで、正面を向いたままだ。

「アンタのクラスの奴からも相談受けたしよ? 受けたからには見過ごすわけにゃいかねぇだれ?」
「・・・アンタよぉ。」
くるっと振り向いた伊達は、苛々とした表情で長曾我部を睨んだ。
「それ、好き好んでやってんのか?」
「あ? まぁ煙草はすきだけどよ。」
「煙草じゃねぇよ。 その、お節介。
「あぁ、それさ・・・なんつうか癖みてぇなもんだな。」
「じゃぁ今すぐやめろ。」
急の事で一瞬きょとんとしたが、次には困ったような表情で長曾我部は笑った。
「つってもよぉ、誰かに相談されちゃぁほっとけねぇだろ?止めろっつわれても−ッ?!」
ガシッて伊達は長曾我部の胸倉を掴み上げると、眉間の皺を深くし、長曾我部に詰め寄った。
「アンタ、自分の首絞めてんのがまだ解んねぇのか?」
引く出された声に長曾我部は一瞬息を呑む。

「・・・俺頭悪ぃからよ、何の事だかさっぱり解んねぇんだけど。」
困ったように笑うと、長曾我部は胸倉を掴んでいる伊達の手を優しく掴んだ。

「俺にはアンタの方が自分で首絞めてる気がするんだけどよ?」
「アンタに言われたくねぇな。」
握られた手ごと乱暴に長曾我部を放すと、伊達は長曾我部から煙草を奪い、火を付けた。
「−・・・アンタの事、クラスの奴等から良く聞くぜ? アンタ、お節介が天職らしいなぁ?」
「天職っつうか、幸せ分けてもらってるだけだぜ?・・・ なんつうか、誰かの幸せの手伝いが出来ると嬉しいじゃねぇか。」
笑いながらそう答える長曾我部に対し、伊達はますます怒りを露にし、煙草を捨てると足で踏み躙った。
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