親政BSR

□落ちる(完)
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 自慢げにそう見下ろす男に、俺も見上げて笑ってやった。
「はっはぁ、確かに俺にはンな器用な事ァ出来ねぇなぁ。」
男はふと、視線を俺の隣の武器に移した。
「それがアンタの武器か?随分と面白そうなモン使うんだなぁ−・・・。どうだ?アンタさえ暇なら俺の相手しねぇか?」
ニヤリと笑って見下ろす顔には、何処か無邪気さが見え、男を幼く見させた。
「ぃいねぇ、アンタ・・・俺を楽しませてくれんのか?」
「さぁ?それは俺が知りてぇなぁ。」
生意気に言う様は何だか近所の悪ガキだ。
「くっく、よし!!!俺ァ、長曾我部。−・・・鬼ヶ島に鬼ってぇのは、俺の事よ。アンタ名前は?」
男は一瞬気まずいような顔をした。
そして何か閃いたのか、楽しそうに笑って言葉を発した。
「・・・俺は竜だ。空を駆ける蒼い竜−・・・中々だろ?」
「蒼い竜・・・ねぇ。くっく、確かに悪くねぇ。・・・が、落ちちまったら格好が付かねぇなぁ?」
「ゥ・・・煩せぇ!!!///」
「いっそ俺に飼われねぇか?竜なら海も好きだろ?」
「飼われて堪るか!!!つうか戦う気あンのかよテメェ!!!」
「はっはっは。そう気を早らすなよ、蒼い竜。」
「shit、アンタはslow paceで調子が狂うぜ。もっとtempoよく会話出来ねぇのかよ・・・。」
「あ?−・・・よく解んねぇよ。外来語か?」
「どーでもいいから、さっさと始めようぜ。アンタに付き合ってるとその内、茶まで出てきそうだぜ・・・。」
「くくっ、違いねぇ。−・・・なら、お手合せ願えますか、蒼い竜。−・・・いや、独眼竜ってのも悪くねぇと思わねぇか?折角俺とお揃いなんだからよ。」
男・・・もとい、蒼い竜は酷く驚いた表情をしたあと、楽しそうにケタケタ笑いだした。
「アンタ、馬鹿そうに見えて・・・中々いい感してんじゃねぇか?独眼竜−・・・あぁ、しっくりくるな−・・・。」
そう言うと、何処か遠くをぼんやりと見つめていた。
その視線を絡めたくて、俺は立ち上がると、竜を呼んだ。
「『独眼竜』、手加減はしねぇぜ?」
「Okey!!! partyの始まりだぜ!!!        




1時間後−・・・


いつの間にか部下達が見物に来ている事にも気付かずに、独眼竜と手合せをしていた。
自ら竜となのるだけはある。
俺と対等な力は認めざるを得ない。
だが−・・・
「オメェよぉ、ンな細っこい腕によくそんな力あるよなぁ?」
そう言うと、途端に不機嫌な顔になり、乱暴に刀を振るってきた。
「ッチ、アンタだって伊達にデカイの振り回してるって訳じゃねぇな。」

彼此、この様に武器を交えて1時間以上経っているが、勝敗は全く付く様子はなかった。
「−・・・埒がねぇ。一旦休憩しようぜ?」
俺は距離を置き、武器を担いだ。
「そうだな・・・。−・・・日差しが暑ぃ。」
日差しだけではないだろうが、独眼竜は重そうな羽織を脱ぎ捨て、軽い服装になると船の縁に足をかけた。
「ぉ、おい独眼竜?!」
慌てて止めるも一足遅く、独眼竜は飛び降りるように海に身を投げた。
その様子に、俺よりも先に部下が動いて浮き輪を投げた。
「oh♪悪ぃな!!!」
無邪気にそれを受け取ると、浮き輪の穴に腰をかけて椅子のようにどかりと座った。
「〜♪気持ちいぃねぇ。」


『−・・・・・・。』

俺達はただ呆然とコイツを見る事しか出来なかった。


−・・・どうも調子が狂う。
血気盛んに挑んで来るかと思えば、餓鬼の様に無邪気に波に揺られている。

挑発的な面と、無邪気な面。全く違うその感情とは裏腹に、どちらも酷くこの男に似合うと思った。


「・・・アニキ、あの男は何ですかぃ??アニキと対等にやり合うたぁスゲェ奴ですが、一体何処から??」
何処、と言われ、俺は空を見上げた。
「くっくっく、ありゃ空から落ちてきた竜だ。」
「へ?」
呆気に取られている部下をニヤリと笑って見ると、視線を海に−・・・独眼竜に移した。
「ほら、見てみろよあの面ァ。」
「?」
「くくっ、ヤッパリ海が好きなんじゃねぇか。 水を浴びて生き生きしてらぁ。」
海と戯れる独眼竜に、自然と笑みが零れる。

「あぁ、確かにそうッすねぇ・・・ッて本当に竜なんすかアニキ?!」
「さぁな?でもよ−・・・竜を飼うってぇのも、存外悪くねぇと思わねぇか?」
「・・・竜ッて何喰うんすかね・・・。」
「はっはっは、今は人の形してんだ。同じモンでいいだろ。」
「そうっすね!!!あ、じゃぁ今晩はアイツの祝いに宴会開きますかアニキ!!!」
「だな。」
「じゃ、今から気合い入れて準備してきます!!!」
「おぅ、頼んだぜお前ェ等。」
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