保健医パロ
□問題児と俺のスタート
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何故、こんなに自分が拒まれたのかは解らないが、今すべき事は伊達の介抱。
俺は解熱剤を取ってくると、水と一緒に口に含み伊達に口移しで流し込んで飲ませた。
...にしても、よく我慢できたもんだ
症状から見るに、流行りだしたB型インフルエンザだろう。
伊達の額に解熱シートを張り、布団をしっかりとかけ直すと、その顔をじっと見た。
こんな症状を隠せる演技力は、褒めたものではない。
そして、一人で何でも解決しようとする考え方も頂けない。
この少年の経歴は知らないが、大概こうなる原因は家庭にある。
別に珍しいという類ではないが、ここまでくると問題がありそうだ。
「ッ・・・見・・・る、な・・・」
(・・・『見るな』?)
うなされているのか、苦しげに零された言葉が擦れて痛々しい。
俺は膝をついて伊達の手を握ると耳元に囁き続けた。
「・・・何も恐くねぇよ、恐くねぇ。大丈夫だ・・・」
何分間そうしていたのだろう、程なくし伊達からは静かな寝息が聞こえてきた。
「・・・」
それを確認し、俺は立ち上がるとドアに向かい外出中の札を立て、鍵を閉めた。
そしてカップに珈琲を注ぐと、ドカリと椅子に座り込み、頭を後ろに反らせ、天井を見上げた。
「どーすっかなぁ・・・」
あそこまで人に拒まれた事も、睨まれた事も無い。
それも話した事も視線すら交わした事も無い相手にだ。
その事も悩みの種だが、もう一つ大きな悩みがある。
確か、コイツは特待生で部屋は一人部屋。
なので介抱するルームメイトもいないし、インフルエンザだから誰かに介抱なんてさせられない。
病院なんて行かねぇだろうし、身内にも連絡したくないんだろう。
・・・と、なると?
「1週間位、俺の部屋に泊めるしかねぇんだよなぁ。 料理なんざ出来ねぇぞ・・・」
首を元の位置に戻し、珈琲を口に含んだ。
「−・・・大人しく付いて来てくれるとも思えねぇしなぁ・・・」
何もそこまでする必要があるのか、とも一瞬思ったが、この頑固者を放っておくと、部屋で倒れて病院行き、なんてことになりかねない。
「やっぱ、引っ張ってでも連れてくしかねぇよな」
すぐ目の前の難関に、これからの1週間に、深いため息が何度も吐かれた。