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□辞書(3)
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その時のあいつの目は、まさに「獣」だった。ギラギラと底光りするような眼光。獲物を目の前にした、腹が減った猛獣のような。その目に恐怖を覚えるとともに、ひどく惹きつけられた。ただそれを見たのは一瞬だけで、その後すぐ、くしゃりと破顔させ、まるでさっきの目はこいつがしたものかどうか疑わしくなるほどに、何も知らない子供のように純粋で綺麗な笑顔になって、そして


「すげえな、花井!」


と言った。













俺の常識が、打ち崩された瞬間だった。










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