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□辞書(1)
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高校1年夏、俺は男に恋をした。

金属の棒に白球が当たる音と共に、ボールが白い線となって打ち出される。ああ、まただと俺は思う。その確実にボールを捉え、振り出されるバット。大きな当たりではないが、確実に前に飛んだことを確信させるその音。その通りに描かれる白球の流線。その全てに、胸が大きく高鳴るのだ。その全てに、一々自分の想いを感づかされるのだ。もちろん、野球というこの雰囲気や一連の流れに、気持ちが高まっているのは始終感じている。だけれど、この瞬間はいつも他とは違っていた。
「セーフッ!!!」
滑り込むことなく、あいつは一塁を蹴った。あいつはきっと笑っている。捕食者のように瞳をギラつかせて。

『ライト、花井君』



さあ、俺の出番だ。








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