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□辞書(3)
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ホントなんなんだろう?なんだか今日は田島が変だ。そんな気がする。1日で2回もあの獣の目を見るなんて、そんなことは今までになかったし(一番頻度が短くて一週間に一度くらいだったし、その目を意識する前は見たこともなかった気がする。つまりなかなか見ないというのが普通だった。)特に変なのが辞書だ。なんで辞書を使ってるかどうかであんな真剣になったんだろう?
さっき田島が返した辞書をバッグの中に見る。なんだろう、何か大事なことを見落としてたんだろうか?
辞書を開けようと伸ばした手は、先生がドアを開ける音に中断される。次は数学だ。そんなときに国語の辞書を開けていれば、目立つことこの上ない。先生に目を付けられるのはごめんだし、辞書は次の休み時間にでもみればいいや・・・ということでバッグに伸びた手を戻し、眼鏡をかけた。テスト前だし、集中して勉強しなければ。けど、
――授業に身が入るかな、これ・・・――
ちらちらと目の端に辞書を映しながら、俺は長い数学の時間を受けることになりそうだ。
(4)へつづく