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□No Title
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―しくじった…!―
後悔と自責の念に襲われたが、こんなことは今考えても意味がないと思い、軽く頭を振って考えを切り替える。
とりあえず今は、やつらを振りきることだけだ…。
なんて、そうは思ってみてもやはり今回の失敗は痛い。
どうしても頭の方向がそちらへ向かってしまう。
出来れば舌打ちでもしたい気分ではあったが、それだけの余裕さえ今はもうありはしなかった。
無情にも、自然は味方してくれてはいない。
丈の長いトレンチコートが前から吹き付ける風の抵抗をモロに受ける。
慣れないモノなど着てくるのではなかった、と二回目の後悔だ。
…おまけに降り積もった雪のせいで走りにくい。 ああ、最悪だ…
耳には自分の荒い息遣いとアスファルトを踏む足音だけが聞こえる。
この時期のここは寒い。
呼吸も凍るのではないか、と思うほどに吐く息は真っ白だった。
そろそろ、足も限界だ。
途端、急に視界が開け、周りの景色がクリアになる。
そこまで真剣だったのかと少し苦笑しながらなるべく長く見付からずに休めそうなところを足を止めずに探した。
と、見付けたのは路地裏。
とにかく走るのをやめたくはなかったので(やめるとそのまま座り込みそうだった)角を曲がってそのまま走り込んだ。
そこは雪が反射して多少明るくなってはいるが、奥は何があるかわからないほどの深淵。
人が二人通れるほどの幅はあったが、ゴミ箱や段ボールなどで道は大きくせばまっている。
好都合の場所だった。
安心したのか、足が今までとは比べものにならないほど重く、固くなり思うように進まなくなる。
それに、さっきから肩の傷の痛みが酷い。
走っている間はそんなことを気にする余裕などなかったのだか、ここへきて、そんなものもあったと思い知らされる。
もう一歩も歩けなかった。
壁に体を預け、そのまま崩れるように座り込んでしまう。
地面は雪で白く染まっていて、まるで絨毯のように暖かそうではあったが、やはり予想に反して、当然の如く冷たい。
…コートが濡れて凍ってしまわないか、心配だった。