Dear My HERO !

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「…人質はお願いしますね、折紙サイクロン。」



そう言われ、同時に肩を叩かれた。

それまで感じなかった気配。

弾かれたように声の方を見上げれば、僕の肩に置いた手を反動に飛びあがる人の姿。

置かれた手は空気のように軽くて、何が起こったのか理解できないでいた。

ただ、シュテルンビルトを照らす満月を背景に絶世の美女が空を舞っていた。

それはまるで、月から舞い降りたかぐや姫のようだと、

僕の視線が釘付けになった瞬間、視界は眩い光に包まれた。



How do you do? HERO!



眩い光が次第に弱まって、慌てて近づけば何かが胸に飛び込んでくる。

それが人質の女性だとわかると、彼女を抱き抱え、犯人から離れた。

離れた所に人質を下して、急いで犯人の方を見た。

高い位置で結われた長く艶やな黒髪、赤く色づく唇に柔らかい乳白色の肌。

風に撫でられシャランと鳴る月を象った髪飾りに、桜の簪。

濃い紺色地に淡い朱鷺色の桜と紫紺の蝶が舞う着物をモチーフにしたコスチュームは、丈が短く、肩まで開け広げられた襟元からは豊かな胸元が見える。

そんな格好をしているのに軽々と動き、蛍光色の光を放つ紐で犯人を拘束していた彼女。

茫然と彼女を見つめていると、彼女の青い瞳が僕を見た。


「あ、あの、あなたは…?!」

「初めまして、折紙サイクロン。」


彼女が柔らかい微笑みを浮かべ、それに胸が弾けた。


「私の名前はビーナスかぐや。よろしくお願いしますね、先輩。」


『今情報が入ってきました!突如現れた絶世の美女!その名もビーナスかぐや!ニューヒーローの誕生です!!』


「ニュー…ヒーロー?その格好は…」

「あ…これは日本のかぐや姫をイメージしたらしいんですけど…なんだか花魁みたいですよね…」


少し恥じらったように彼女が胸元を押さえた。

花魁っていうのは…芸者の仲間かな?帰って調べなきゃ…!!

そんなことを考えながら彼女を見れば、彼女が笑顔を僕に向けた。


「よろしくお願いしますね、折紙さん。」


その笑顔は妖艶な姿に似合わず、とてもかわいかった。





2011/11/19


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