Dear My HERO !

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「というわけで、今日はビーナスの歓迎会をするわよ」

「え?」

「いいねぇ!牛角行くか!」

「ちょうどクーポンもらってきたところだからいいぞ!」


というわけで、トレーニング後、私の歓迎会を開いていただけることになりました。



そこまでは良かった…



― Call my name, Hero! ―



「あ、あの、大丈夫ですか?」

「どぅわーいじょうぶ!らいじょうぶ!」

「おい、虎徹。お前飲み過ぎだぞ…」

「そうれすよ、おりさん!」

「ハンサムも飲み過ぎよ〜ねぇ、ロックバイソン?」

「おまっ、尻を撫でるんじゃねぇ!!」


…みなさん、酔ってますね。


歓迎会はあっと言う間に二次会になっていた。

最初は牛角で焼肉を食べていた。

そこではカリーナもホァンちゃんもいて、盛り上がったけどそこまで皆の酔いは回ってなくて…

二人にお迎えが来て、帰ってしまって…

スカイハイさんも用事があるのか帰ってしまって…

「二次会行くぞ!」とタイガーさんが先導を切って和風な飲み屋に向かった…ら、


「バニーちゃん、お前何飲んれんの?」

「ロゼれすよ、おりさん。」

「二人とも目が座ってるわよ…」

「おいおい、大丈夫かお前ら…」


ネイサンもロックバイソンさんもお酒飲んでるけど、そこまで飲んでないからか冷静だ。

それが唯一の救いだと思いながら、冷えて汗をかいた烏龍茶のグラスを傾ける。


「ごめんなさいね、光。二人がハメ外しちゃって。」

「いいえ!みなさんのお陰で楽しいです!ただ…」

「ただ…?」

「折紙さん…大丈夫…ですかね?」


私は小声で隣に座るネイサンにそう言うと、ちらりと折紙さんを見た。

正面に座る折紙さんは静かで何も話しかけてくれない。

白い頬が赤く染まり、アメジスト色の瞳が潤んでいる。

その瞳が時たまこちらを見てくるのだが、目が合うと逸らされてしまう。

一次会では女の子たちに囲まれていたからあまり話できなかったし、二次会でもまだそんなに話をしていない。

ひょっとして…嫌われちゃったのかな?


「あの…折紙さん?」


そう声をかければ、はっとした様子で折紙さんの瞳がこちらを見た。


「な、なんですか…?!」

「あ、あの…折紙さんっておいくつなんですか?」

「あ、えっと、18です…ビーナスさんは…?」

「今年で19になります。」

「あら、光の方が年上だったのね?」

「でもその格好だとブルーローズと同い年くらいの少年に見えるな。」


そう言われて自分の姿を思い出して、苦笑いを浮かべる。

今の自分の格好は、ショートカットの髪に、黒のシャツに白のセーターベストとスラックス。

胸は特性のベストで隠してるからほぼ平たい。

声もあまり高い方ではないから、低い声で話せば男の子にしか見えないだろう。

もちろん、そう見えるようにこういう格好をしてるわけだから、そう見えてくれることは有難いわけだが…


「ヒーローやってる時はもっと年上に見えるけどな。なんていうか…」

「いろっぽいよな!」

「おりさん、せくはられすよー!」

「ちょっと、あんたたち黙ってなさいよ!」

「あはは…恐縮です」


どう反応していいのか分からないけど、確かにヒーロー時の格好は露出が過ぎるし、そういう風に見られても仕方ない気がする。

むしろ会社はそれを狙ってるんだろうし…


「でも、本当にその格好だと美少年よね。かわいいわー。」

「その格好だったら変な男に付きまとわれる心配なさそうだしな。」

「本当はヒーローもこういう身軽な格好でやりたかったんですけど…」

「あら、あの格好はあれで素敵よ!ね、折紙?」

「はいっ!!」


あまりの即答に驚いて折紙さんを見れば、はっとしたように目を見開き、顔を真っ赤にさせた。


「す、すみません…!」

「いいえ。気にいっていただけたなら嬉しいです。」

「あ、あの…敬語じゃなくていいですよ…僕の方が年下なんだし…」

「じゃあ、折紙さんも敬語じゃなくていいですよ。1歳なんてあってないような差なんですから。」

「で、でも…」

「ダメ…かな?」

「っ…だ…ダメじゃない…けど…」

「よかった!よろしくね、折紙さん!」


ほっとしてそう言えば、折紙さんはまた顔を赤くしてグラスの液体を一気に飲み干した。


「あっ、折紙、それ酒だぞ!」

「あらあら…」

「え?確かシュテルンビルトでは18歳から飲酒していいんでしたよね?」

「そうなんだけど…折紙は酒弱いんだよ。」

「えっ?!」

「まぁ、あんまり飲ませないなら大丈夫でしょ…」

「そういえばビーナスは飲まないのか?」

「私の国では飲酒は20歳からですし…お酒は飲まないつもりなんです」


苦笑いを浮かべながらそう言って、カランと氷が解けて音を立てたグラスを握った。


「ねぇ、その格好は会社に強要されてるの?」

「いえ、そういうわけではないんですけど…利害一致と言いますか…この格好の時は男として振舞おうかと思ってます。」

「声も落ち着いてるし…口調も変えたら本当に美少年だな。」

「そうですかね…『俺』っていうのはまだ馴れないんですけど、頑張ります。」


そう言って笑えば、ネイサンに抱きしめられた。


「可愛い!!」

「おいおい、相手は男の子に見えても女の子だぞ!」

「んもう、だからかわいいんじゃない。」

「お前が言うとどっちの意味でもあぶねーよ!」

「ビーナス!俺の胸に抱きついていいぞ!」

「虎徹!お前も便乗してるんじゃねぇ!つーか大声でその名前呼ぶなよ!」

「あ…みなさん、この格好の時はわた…俺のことは『光』って名前で読んでください。」

「よしきた!俺のことは虎徹って呼べよ!」

「おりさんなんておりさんでいいですよ、光。」

「俺のことはアントニオって呼んでくれな。」

「はい!ありがとうございます。」


みんな本当に温かい。

年齢もタイプもバラバラなのに…

笑顔で見渡して見るとこちらをじっと見る瞳と目があった。


「折紙さんも光って呼んでね。」


そう言ってみると折紙さんは酒に酔ったのか真っ赤の顔でこくこくと頷いた。


「い、イワンれす。」

「イワン?折紙さんの名前、イワンなの?」


そう言うと再びこくこくと頷く。

なんだか小さい子どもみたいでかわいい。


「じゃあ、イワンって呼んでもいい?」


そう問えば、またこくこく…いやブンブンと音が聞こえるように激しく頭を振っている。

だ、大丈夫かな…


「あらあら、折紙ったら……」

「そういえば折紙って呼びやすいから『イワン』って呼ぶことあんまりなかったな。」


そうネイサンとアントーニョさんが言うので、よっぽど名前で呼ばれるのが嬉しかったんだなと納得してしまった。

これから楽しくやっていけそうだ。




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折紙 虎 兎

光 炎 牛

…という席順。



2012/07/15




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