THE BASKETBALL WHICH KUROKO PLAYS

□天命を待つ二人
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天命ってなんだ。

わからない。




「真ちゃーん!」

「……何なのだよ?」

「おんぶー」

「なぜ」

「じゃあ、だっこ!」

「だからなぜ」

「あ、やっぱお姫様だっこがいい!」

「………」

「あれ?頭痛いの真ちゃん?」


眉間にシワを寄せて、実に困ったように手を額に当てた真ちゃんを下から覗き込む。

すると「はぁー」とため息の音がして、眼鏡越しに真ちゃんの瞳が私を見下ろした。


「人の話を聞くのだよ」

「あいた!」


ぺちっと音がして、真ちゃんの長い指が軽く私の額を叩いた。

そんなに痛くないけど反射的に痛いと言ってしまったら、真ちゃんが少しだけ心配したように頭を撫でた。


「突然どうしたんだ?」

「えー?真ちゃんって身長高いから、力持ちかなって思って?」

「…ある程度の力はあるが、俺は必要以上に重いものは持たないのだよ。」


知ってるけどね。

バスケのために指を大切にしてる真ちゃんは、重いもの持ったりしないし、プロレスラーみたいに太いムキムキでもないしね。


「なんだー。真ちゃんは私を抱えることもできない非力さんなのかー!」

「非力ではないのだよ」

「私みたいに軽い女の子一人も抱えられないのかー残念!」

「だから非力」

「いいや。高尾くんにお姫様だっこしてもーらお!」

「っ!待つのだよ!」


背を向けた私の手を彼が掴んだ。

しめた、乗ってきたな。


「聞き捨てならないのだよ!高尾にできて俺にできないわけないのだよ!」

「えー?いいよ、無理しなくて。私結構重いし、真ちゃんには無理だよー」

「無理じゃないのだよ!」


ムキになってる真ちゃんは私を突然抱き抱えた。


「わわっ!?」

「真白は軽すぎなのだよ。」


まさかのお姫様だっこ。

本当にされると中々照れ臭い。

そう思いながら上を見上げれば、真ちゃんがこっちを見ていた。

長い下睫がはっきり見えるくらい顔が近い。



「…どうしたんだ?」

「え?」

「足だ。」

「……なんで?」

「最近ソックスではなく黒タイツを穿いている。」

「やだー!真ちゃんてば、えっちー!」

「ちっ、違うのだよ!」

「真ちゃんてば私の脚見てたのね…私の脚ってば罪作り…!」

「だからっ…!」


真ちゃんは何か言いたげに口を開いたが、諦めたようにはぁーっと深くため息をついて、また私を見た。


「…足を引きずっているのも見た。」

「……」

私は目を見開いたが、すぐに伏せて真ちゃんの視線から逃げた。


あーあ。

なんでそんなのに気がついちゃうかな…



「真白?」

「…んー?」

「…怪我してるのか?」

「……んーん」


私は真ちゃんの首に腕を回した。

そして首元に顔を埋めるように抱き締めた。


「真白?」

「…真ちゃんって、力持ちだね。」

「…やっと認めたのか。」

「うん…私でも軽々なんだね。」

「…真白は軽いからな。もっと太ったっていいのだよ。」

「……安心したよ。」

「何がだ?」

「真ちゃんが私を抱えることできるってわかって。」

「…そうか。」

「きっと真ちゃんは私を抱える天命にあったのだよ!」


そう言うと真ちゃんはほんの少し笑って歩き始めた。

私は相変わらず抱きかかえられたままで、真ちゃんの歩く振動を体で感じていた。



「ねぇ、真ちゃん。」

「なんだ?」

「また、いつか…こうやって…歩いてくれる?」


そう言いながら、私は笑顔を作ろうとしたができずに、彼の肩に顔を埋めた。


彼は私の頭を優しく撫でて言った。


「真白が望むなら、またやってやるのだよ。それが俺の天命なのだろう?」

「…うん。」


その言葉に私は返事をすると、静かに涙を流した。





天命を待つ二人





ねぇ、真ちゃん。


私の脚、病気なんだって。

切り落とさないと命に関わるんだって。


これが私の天命なんだね、

なんて、



「ん?何か言ったか?」

「…ううん。真ちゃんてばかっこいいね!」

「…褒めても何も出さないのだよ。」

「えー!ケチー!」




言えるわけないよね。





121102

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真ちゃんの口調わからないのだよ!



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