THE BASKETBALL WHICH KUROKO PLAYS
□針を飲むのは誰だ
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「真白っちー!一緒に帰りましょー!」
「無理」
「即答!?ていうか無理ってなんすか!?」
「ひどいっすー!!」と涙目になりながら自分の後ろを追いかけてくる彼は、でかい図体をした子供のようだ。
小さい頃の彼の姿が思い出され、あの頃と今の関係はあまり変わってないのではないかと錯覚してしまいそうになる。
だが、ふと通りかかった店のガラスに貼られたポスターを見て、その錯覚が錯覚である事実を突きつけられる。
ポスターに写っているのは、モデルの『黄瀬涼太』。
今自分の後ろを追いかけている彼だ。
大人びた表情を見せている彼は、私の知っている幼馴染みの『黄瀬涼太』ではない。
優しくて怖がりで、私の側から離れなかった涼太も、そんな彼が好きだった私も、もういないのだ。
「どうしたんっすか?」
耳元で声が聞こえて、はっと目を見開けば、店のガラスに反射して映る黄瀬涼太と目があった。
「……何でもない」
そう言うと早急に目線を反らし、足を進めた。
「真白っち」
「隣、歩かないで」
「……俺、何かしたっすか?」
「……」
何もしてない、とは言えなかった。
小学生の頃引っ越した私が彼と再会したのは、中学一年の春。
友人が見せてきた雑誌に『大注目イケメン』と煽り文句が載せられ大きく写っていたのは、涼太だった。
でも、それは私の知っている涼太とは違った。
『かっこいいよねー!!』
『私ファンになっちゃったー!!』
友人たちの騒ぐ声が頭に響いて離れない。
私たちは距離も心も離れてしまったのに。
次に彼と会ったのは高校の入学式だった。
『会いたかったっす!』
彼は人目も阻まず抱きついてきたかと思えば、はっとしたように体を離して、真っ赤な顔で『ひ、久しぶりっすね!』と照れ笑いをした。
『あれってモデルの黄瀬涼太だよね?』
『かっこいいー!』
『一緒にいる子誰?』
『彼女?』
『えー!ショックー!!』
そんなざわめきが耳に入り、私は弾かれるように涼太から離れ、その場から逃げ出した。
わかってる。
釣り合わないんでしょ。
涼太はモデルでかっこいいし、器用で何でもできる。
もう、昔みたいに泣きながら私を追いかけてる涼太じゃないんだ。
私なんて、いらない。
「…真白っち?」
「……何?」
「俺のこと嫌いになったっんすか?」
「……『嫌いになった』って何?元々好きじゃ」
「好きじゃないなんて、言わないで」
後ろから重みがかかり、長い腕が体に巻き付けられる。
「はっ、離して!」
「俺、真白っちに嫌われたら、どうしていいのかわかんない…!」
「っ…!」
なんで、
そんなに悲しそうな声で、
震える声で、
苦しそうに、言うの?
「モデルの黄瀬涼太が私なんかに構わないで」
「…やっぱりモデルやってることが原因なんすか?」
「…モデルなんだから、私に構わないでよ。誤解されるよ。」
「周りにどう見られようが関係ない」
「嘘つき……すぐに嫌になるに決まってる。」
「っ…嘘つきはどっちっすか!?…約束覚えてないんすか?」
「…約束?」
苦笑いを浮かべている彼の瞳はまるで泣きそうで、昔の彼の姿と重なった。
『ねぇねぇ、真白ちゃん』
『なぁに?』
『あのね、あのね!将来僕のお嫁さんになってくれる?』
『うん、いいよ!』
『やったぁ!絶対だよ!指切りげんまん!』
『嘘ついたら針千本のーます!』
「……覚えて…たの?」
「…俺、真白っちに針千本なんて飲ませらんないっすよ」
そう言って笑う彼の胸に、私は勢いよく飛び込んだ。
針を飲むのは誰だ
頭の中で警鐘が鳴る。
きっとこれは棘の道だ。
でも、そんな未来も悪くないと、彼の腕の中で静かに涙を流した。
121102
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黄瀬くんかわいいですね、誰かください
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