THE BASKETBALL WHICH KUROKO PLAYS

□この感情を消してくれ
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正直に言おう。


女なんて面倒だと思ってた。


あいつと会うまで。





「笠松先輩!」



呼ばれた瞬間胸が跳ねたのは驚いたからに決まっている。

女子の、しかも後輩から声をかけられることはあまりない。

だから、声をかけたのがこいつでなくても、きっと俺の心臓は驚いていたはずだ。



「…笠松先輩?」

「あ…悪い。なんだ?」

「この間先輩が探してたバスケ雑誌見つけたんですけど、読みますか?」

「えっ?いいのか?」

「はい。ちょっと待ってくださいね。」



そういうと自分のカバンを漁って雑誌を取り出し、俺に向かって差し出した。

後輩の視線と俺の視線がかちりと合い、それに気がついた瞬間思わず目を逸らしてしまった。



「あっ…ありがとな!」

「いえ…あっ」

「っ!?」



突然伸びてきた手がするりと頬に触れた。

ほんのりとした指先の温かさが俺の頬に熱を移した。

撫でられたと頭が認めるまで動けなかったなんて、本当に俺は運動部に所属してるのか?



「なっ、何をっ…!?」

「花びら、ついてました。」


すっと戻った手には淡い桜色の花弁が一枚握られていた。

あいつはふふっと笑い声を漏らした。

その笑顔に息が止まりそうになる。



「? 笠松先輩…?」



ダメだ、俺を見るな。



「なっ、なんでもない!」



花びらが髪についてたことに気づかなかったとか、それを取るために伸ばされた手に緊張しただとか、あいつの笑顔がかわいいだとか。

いろんなことに恥ずかしくなって、真っ赤に染まった顔を隠すようにあいつに背中を向けた。



キーンコーン カーンコーン



学校の聞きなれたチャイムが鳴り響く。



「あっ!もうこんな時間…先輩、部活に行きましょう!」



そう言って俺の横を通り過ぎて前に歩み始めるあいつは、俺の気持ちなんかまったく知らないんだろうな。


知られたら困るけど。



「真白っちー!」

「あっ、涼太…」

「真白っち、ひどいっス!俺を置いていくなんて!」

「だって、女の子に囲まれたから…」

「っ!や、ヤキモチ…!?」

「部活に遅れちゃうでしょ」

「真白っちってば…かわいいっ!!大丈夫っス!俺は真白っち一筋っス!!」

「ねぇ、話聞いてた?」



目の前の光景が俺の思考を現実へ引き戻す。



そうだ。


そうだった。



あいつは『バスケ部のマネージャー』で、


俺の『後輩』で、



俺の『後輩の彼女』だ。




「笠松先輩!行きましょう!」



前を歩く彼女が振り向いて、俺を呼んだ。


あぁ、なんて面倒なやつに惚れてしまったんだろう。






この感情を消してくれ






女なんて面倒だと思っていた。


あいつに会うまで。


面倒なのは女ではなく、この感情だと知ったのは、あいつに会ってから。









********


笠松先輩好きだ。
そして、海常が好き。





2013/05/17


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